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 平成10年版 犯罪白書 第1編/第2章/第7節/2 

2 銃器犯罪

(1) 銃器犯罪の現状

ア 発生状況

 警察庁生活安全局の資料によれぱ,平成9年における銃器(けん銃,小銃,機関銃,砲,猟銃,その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃をいう。以下同じ。)発砲事件による死者数は,I-17表のとおり,前年を5人上回る22人に増加している。死者数に占める,暴力団勢力(暴力団の構成員及び準構成員)以外の一般人の被害書(巻き添えによるものを含む。)の比率も,前年の35.3%(6人〉から40.9%(9人)に上昇している。また,9年における銃器の発砲回数は,同年8月に,指定暴力団幹部がけん銃で射殺される事件が発生し,その後同事件に関連すると見られる銃器発砲事件が相次いだことなどから,前年の128回を20回(15.6%)上回る148回となっており,銃器犯罪の凶悪化がうかがわれる。

I-17表 銃器発砲事件における死者数(平成5年〜9年)

イ 検挙状況

 I-47図は,最近5年間における,銃器使用犯罪の検挙件数及びそのうちでけん銃が使用されたものの件数を,暴力団勢力によるものとそれ以外によるものとに区別して見たものである。銃器使用犯罪の検挙件数は平成7年以降減少しているが,検挙件数に占める暴力団勢力以外によるものの比率は,近年上昇傾向にあり,8年には検挙件数の33.9%に達し,9年も29.7%と高い水準にある。

I-47図 銃器使用犯罪検挙件数の推移(平成5年〜9年)

 I-48図は,最近5年間における,けん銃に係る銃刀法違反の態様別送致人員の推移を見たものである。けん銃に係る銃刀法違反の送致人員は,平成7年以降900人台となっていたが,9年は745人(前年比18,3%減)となっている。また,態様別では,けん銃の加重所持は,9年には374人(同19.4%減)となっている。なお,7年5月に,銃砲刀剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)の一部改正により新設された発射罪の送致人員は,8年,9年共に26人となっている(巻末資料I-5参照)

I-48図 けん銃に係る銃刀法違反の態様別送致人員の推移(平成5年〜9年)

ウ けん銃の押収状況

 I-49図は,最近5年間における,押収けん銃丁数を,暴力団勢力から押収したものと,それ以外の者から押収したものとに分けて見たものである。けん銃の押収丁数は平成7年までは増加を続けていたが,暴力団勢力からの押収丁数が大幅に減少したことに伴い,8年,9年と続けて大幅に減少している。

I-49図 けん銃押収丁数の推移(平成5年〜9年)

 平成9年に押収された真正けん銃について,これを製造国別に見ると,アメリカが最も多く,374丁(352%)で,欠いでフイリピン122丁(11.5%),中国115丁(10.8%)の順となっている。また,9年において,けん銃の密輸入事件で検挙された人員は,前年の2倍の14人,押収されたけん銃は,前年の約3倍の38丁となっている(警察庁生活安全局の資料による。)。

(2) 銃器犯罪対策

ア 銃刀法等の改正

 深刻化する銃器犯罪への対策として,平成5年に銃刀法及び武器等製造法の一部改正(同年7月施行)が行われ,これにより,けん銃等(けん銃,小銃機関銃又は砲をいう。以下同じ。)に係る罰則の法定刑が大幅に引き上げられるとともに,けん銃等不法所持罪の加重類型である加重所持罪が新設される一方,けん銃等を提出して自首した場合の刑の必要的減免規定が設けられるなどした。さらに,7年の銃刀法の一部改正(同年6月施行)により,けん銃等の発射罪等が新設される方,クリーン・コントロールド・デリバリー(送り荷中のけん銃等を取り除いて行う監視付き移転)を実効あるものとするため,けん銃等でない物品をけん銃等として輸入等する罪の新設等が行われた。

イ 銃刀法違反の科刑状況

 法務省刑事局の資料により,平成9年のけん銃等,けん銃実包及びけん銃部品に係る銃刀法等違反事件の通常第一審の科刑状況を見ると,これらの事件により懲役の言渡しを受けた者の総数は227人(うち,執行猶予54人,実刑率76.2%)であり,事件別では,「けん銃及び実包所持」が154人(67.8%)で,そのうち「加重所持」が137人(89.0%)となっており,「けん銃の単純所持」は40人(17.6%)となっている。刑期別に見ると,3年以上5年未満が全体の46.7%を占め,次いで1年以上3年未満が34.8%,5年以上7年未満が11.9%,7年以上10年未満が4.4%等となっている。
 なお,平成9年に,けん銃等を提出して自首し,刑が減免された人員は15人であり,その刑期別の内訳を見ると,5年以上7年未満が5人,1年以上3年未満及び3年以上5年未満が4人等となっている。
 I-50図は,最近10年間の通常第一審における,銃刀法違反により懲役の言渡しを受けた者の科刑状況を見たものである。平成5年までは,3年未満が70%以上を占めていたのに対し,6年以降は,5年の銃刀法及び武器等製造法の一部改正により,けん銃等に係る罰則の法定刑が大幅に引き上げられたこと等に伴い,3年以上が過半数を占めるようになっている。

I-50図 通常第一審における銃刀法違反の懲役の科刑状況(昭和63年〜平成9年)

ウ 政府の取組

 政府は,平成7年9月,内閣に銃器対策推進本部を設置し,同年12月同本部において,関係機関の連携の緊密化,徹底した捜査と厳格な処理,水際対策や国際協力の推進,国民の理解と協力の確保等を柱とする「銃器対策推進要綱を決定し,その後,毎年同要綱に基づいて「銃器対策推進計画を策定し,総合的な銃器対策を推進している。