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 平成10年版 犯罪白書 第1編/第2章/第1節/2 

2 薬物犯罪対策

 政府においては,最近の深刻な薬物情勢にかんがみ,平成9年1月,内閣に薬物乱用対策推進本部を設置し,同年4月,取締りの強化と厳正な処分,国民に対する啓発活動の推進,薬物濫用者等に対する処遇等の充実,国際協力の推進等を内容とする「薬物乱用対策推進要綱」等を策定し,さらに,10年5月,長期的総合計画として「薬物乱用防止5か年戦略」をとりまとめた。
 また,薬物濫用は,我が国のみならず諸外国においても深刻な問題となっており,平成10年5月に開催されたバーミンガム・サミット(主要国首脳会議)においても,薬物犯罪に対する国際協力の推進について声明がなされた。さらに,同年6月に開催された国連麻薬特別総会においては,麻薬等の薬物取引に関連するマネー・ローンダリング対策や司法協力の推進等を内容とする各種宣言・決議が採択された(第2編第6章第2節参照)
 なお,暴力団等による薬物・銃器犯罪等の組織的な犯罪に対処するため,平成10年3月,一定の類型の組織的な犯罪に関する刑の加重,一定の罪の犯罪行為により得た犯罪収益等による法人等の事業経営の支配を目的とする行為及び犯罪収益等の隠匿・仮装・収受の処罰に関する規定を設けること等を内容とする「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律案」,組織的・密行的に行われる薬物犯罪等の一定の重大な犯罪の捜査に関し,裁判官の発する令状により,犯罪の実行に関して行われる電話その他の電気通信を傍受する手続を定めること等を内容とする「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案」及び証人等の住居等に関する事項の取扱いにつき,証人等の安全に配慮する措置に関する規定を設けること等を内容とする「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」が国会に提出された。