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 平成10年版 犯罪白書 第1編/第1章/第1節/2 

2 主要刑法犯の動向

(1) 凶悪犯

 最近10年間の殺人及び強盗の認知件数,検挙件数並びに検挙人員の推移を見ると,I-4図のとおりである。

I-4図 凶悪犯の認知件数・検挙件数・検挙人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 殺人の認知件数,検挙件数及び検挙人員ほ,昭和63年以降平成3年まではいずれも減少傾向にあったが,4年以降は8年を除いていずれも比較的少数ながら増加し,9年は,前年と比べ,認知件数は64件(5.3%),検挙件数は28件(2.3%),検挙人員は42人(3.4%)の増加となっている。9年における殺人の発生率は,1.0である。
 強盗の認知件数,検挙件数及び検挙人員は,平成元年までほいずれも減少傾向にあったが,2年にいずれも増加に転じ,最近2年間は急激な増加を示している。9年は,前年と比べ,認知件数は346件(14.0%),検挙件数は258件(13.1%),検挙人員は762人(31.9%),それぞれ増加している。9年における強盗の発生率は,2.2である。
 警察庁刑事局の資料によれば,けん銃・小銃等の銃器発砲を伴う強盗事件 の認知件数が,平成9年は17件(前年4件)と増加したほか,現金輸送車や金融機関を対象とした強盗事件の増加が目立っている。
 I-1表は,最近10年間の現金輸送車を対象とした強盗事件の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移を見たものである。平成9年は,前年と比べ,認知件数は17件増加しているが,検挙率は,17.9ポイント低下している。

I-1表 現金輸送車強盗事件の認知件数・検挙件数・検挙率(昭和63年〜平成9年)

 I-2表は,最近10年間の金融機関強盗事件について,認知件数検挙件数及び検挙率の推移を見たものである。平成9年について,対象別に見ると,認知件数は,特に郵便局(前年比17件増),信用金庫等(同13件増)を対象としたものが増加し,検挙率は,信用金庫等を対象としたものを除いて前年より上昇している。

I-2表 金融機翼強盗事件の認知件数・検挙件数・検挙率(昭和63年〜平成9年)

(2) 粗暴犯

 最近10年間の傷害,暴行,脅迫及び恐喝の認知件数,検挙件数並びに検挙人員の推移は,I-5図のとおりである。

I-5図 粗暴犯の認知件数・検挙件数・検挙人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 平成9年には,前年と比べ,傷害は,認知件数が1412件(7.9%),検挙件数が1020件(6.8%),検挙人員が1750人(8.3%),それぞれ増加し,暴行は,認知件数が785件(12.1%),検挙件数が281件(5.6%),検挙人員が615人(10.5%),それぞれ増加した。
 脅迫は,前年と比べ,認知件数が136件(15.0%),検挙件数が91件(10.7%),検挙人員が130人(15.4%),それぞれ増加し,また,恐喝も,認知件数が721件(5.9%),検挙件数が519件(7.3%),検挙人員が702人(7.8%),それぞれ増加した。
 平成9年における罪種別の発生率は,傷害が15.3,暴行が5.7,脅迫が0.8,恐喝が10.3である。

(3) 財産犯

 最近10年間の窃盗詐欺遺失物等横領を除く横領及び遺失物等横領の認知件数,検挙件数並びに検挙人員の推移を見ると,I-6図のとおりである。平成9年は,前年と比べ,認知件数が横領以外で増加し,検挙件数が窃盗及び遺失物等横領で増加した。さらに,検挙人員は4罪種共に増加した。

I-6図 財産犯の認知件数・検挙件数・検挙人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 平成9年には,前年と比べ,窃盗は,認知件数が7万6845件(4.8%),検挙件数が2万441件(3.6%),検挙人員が1万2957人(8.0%),それぞれ増加し,遺失物等横領も,認知件数が363件(0.6%),検挙件数が365件(0.6%),検挙人員が265人(0.4%),それぞれ増加した。一方,詐欺は,認知件数が32件(0.1%),検挙人員が492人(6.0%),それぞれ増加したが,検挙件数は349件(0.7%)減少した。また,遺失物等横領を除く横領は,認知件数が52件(3.2%),検挙件数が35件(2.3%),それぞれ減少したが,検挙人員は17人(1.9%)増加した。9年における罪種別の発生率は,窃盗が1320.1,詐欺が39.2,横領が1.2,遺失物等横領が46.7である。
 平成9年における窃盗を手口別に見ると,その構成比はI-7図のとおりであり,重要窃盗犯といわれる,侵入盗,すり,ひったくり及び自動車盗の認知件数の合計が,30万5328件と全体の18.3%を占めている(巻末資料I-5参照)。また,重要窃盗犯の検挙率は68.4%であるが,窃盗犯全体の検挙率は35.2%となっており,大きな差が見られる。

I-7図 窃盗の手口別構成比(平成9年)

(4) 性犯罪

 最近10年間における強姦及び強制わいせつの認知件数,検挙件数並びに検挙人員の推移を見ると,I-8図のとおりである。

I-8図 性犯罪の認知件数・検挙件数・検挙人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 平成9年には,強姦は,前年と比べ,認知件数が174件(11.7%),検挙件数が155件(11・8%),検挙人員が331人(29・6%)・それぞれ増加した。
 強制わいせつも,前年と比べ,認知件数が373件(9.3%),検挙件数が348件(10.1%),検挙人員が179人(10.7%〉,それぞれ増加した。
 平成9年における罪種別の発生率は,強姦が1.3,強制わいせつが3.5である。

(5) 交通関係業過

 I-9図は,昭和30年以降における交通事故の発生件数及び交通事故による死亡者数・負傷者数の推移を示したものである。発生件数及び負傷者数共に53年から増加傾向に転じ,平成9年には,それぞれ78万399件,95万8925人に上っている(巻末資料I-6参照)

I-9図 交通事故発生件数・死亡者数・負傷者数の推移(昭和30年〜平成9年)

 I-3表は,最近5年間における交通関係業過の検挙人員を罪名別に見たもので,その98%以上を占める業務上過失傷害は,平成9年には,63万5135人(前年比5.8%減)となっている。

I-3表 交通関係業過の検挙人員(平成5年〜9年)

(6) その他の刑法犯

 最近10年間の放火,略取・誘拐,文書偽造・有価証券偽造及び賭博・富くじの認知件数検挙件数並びに検挙人員の推移を見ると,I-10図のとおりである。

I-10図 その他の刑法犯の認知件数・検挙件数・検挙人員の推移(昭和63年〜平成9年)

 平成9年には,放火は,前年と比べ,認知件数が90件(4.9%),検挙件数が55件(3.1%),検挙人員が39人(5.5%),それぞれ増加した。
 略取・誘拐は,前年と比べ,認知件数が33件(13.1%),検挙件数が29件(11.6%),それぞれ増加したが,検挙人員は22人(11.6%)減少した。
 文書偽造・有価証券偽造は,前年と比べ,認知件数が96件(1.0%),検挙件数が51件(0.5%),それぞれ増加したが,検挙人員は436人(22.0%)減少した。
 賭博・富くじは,前年と比べ,認知件数が10件(1.6%),検挙件数が13件(2.1%)増加したが,検挙人員は859人(20,8%)減少した。
 平成9年における罪種別の発生率は,放火が1.5,略取・誘拐が0.2,文書偽造・有価証券偽造が7.9,賭博・富くじが0.5である。
 なお,本節で触れなかったものを含め,刑法犯に関するデータは,巻末資 料I-1からI-6までに示してある。