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 平成 9年版 犯罪白書 第2編/第6章/第2節/2 

2 仮出獄の運用

(1) 仮釈放申請受理人員
 II-40図は,昭和24年以降における仮釈放申請受理人員(少年院からの仮退院を除く。以下同じ。)を仮釈放の種類別に見たものである。(巻末資料II-29参照)仮出獄申請受理人員は,戦後の行刑施設における過剰収容を背景に,犯罪者予防更生法の施行直後の25年の6万158人を最高に,26年,27年と5万人台で推移した後,33年以降はおおむね減少傾向を続け,50年代に一時増加傾向を示したものの,60年を境に再び減少に転じ,平成4年以降は1万3,000人台で推移している。拘留受刑者及び労役場留置者の仮出場並びに婦人補導院からの仮退院については,いずれも制度発足後間もなく各申請件数が三けた台に及んだ時期もあったが,その後は減少傾向が続き,近年では共に該当者がない。

II-40図 仮釈放申請受理人員の推移

(2) 仮釈放人員と仮釈放率
 II-41図は,昭和21年以降における仮釈放人員及び仮釈放率を示したものである。(巻末資料II-22参照)仮釈放率については,犯罪者予防更正法が施行された24年には79.7%という極めて高い率を示し,25年,26年と70%を超え,その後60%台で推移していたが,30年代後半以降は,若干の高低を示しながら長期的に低下を続け,57年には50.8%と現行制度発足後最低の率となった。このような状況について,法務省は,仮釈放制度上本来的ではないとの立場から,59年3月,仮出獄の適正かつ積極的な運用に関する方針を示し,以降,仮釈放率は55%を超えて推移している。

II-41図 仮釈放人員及び仮釈放率の推移

(3) 仮出獄申請の棄却率
 地方委員会は,仮釈放の申請について審理を行った結果,仮釈放を不相当と認めるときは,決定をもってその申請を棄却しなければならない。II-28表は,昭和57年,62年及び最近5年間における仮出獄申請に刻する棄却率を,刑の種類等の別に示したものである。
(4) 仮出獄者に対する刑の執行率等
 II-42図は,仮出獄を許された者(不定期刑及び無期刑の者は除く。)の刑の執行率(執行すべき刑期のうち,仮出獄により出所するまでに執行された刑期の比率)を,昭和41年以降について,非累犯・累犯の別に示したものである。また,II-29表は,最近10年間に仮出獄を許可された無期刑受刑者について,行刑施設における在所期間別人員を見たものである。
 なお,不定期刑受刑者の仮出獄については,平成8年には,43人が仮釈放を許可されており,うち短期の刑期の経過前に仮出獄を許された者は12人(27.9%),短期の刑期経過後に許された者は31人(72.1%)となっており,また,刑の執行率(執行すべき刑の長期に対して,仮出獄により出所するまでに執行された刑期の比率)は,70%未満が23人(53.5%),70%以上80%未満が7人(16.3%),80%以上90%未満が11人(25.6%),90%以上が2人(4.7%)となっている。

II-28表 刑の種類・刑期・入所度数別仮出獄申請棄却率

(5) 帰住予定地の環境調整
 保護観察所においては,矯正施設に収容されている者の社会復帰を円滑にするため,その者が収容された直後から継続的に家族その他の引受人との調整を行い,本人の社会復帰のため最も適した環境を準備する環境調整を実施している。
 環境調整の経過・結果は,地方委員会及び本人を収容する矯正施設において,仮釈放審理や矯正処遇の資料とされている。平成8年においては,受刑者2万6,491人及び少年院在院者4,451人の計3万942人について環境調整を新たに実施し,同年12月31日現在,受刑者・少年院在院者を合わせて3万9,415人について環境調整を実施中である(保護統計年報による。)。

II-42図 定期刑仮出獄者の刑の執行率

II-29表 無期刑仮出獄者の行刑施設在所期間別人員