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 平成 9年版 犯罪白書 第1編/第3章/第1節/1 

第3章 刑法犯の動向

第1節 概  説

1 刑法犯認知件数等の推移

 I-1図は,昭和21年以降における,刑法犯及び交通関係業過を除く刑法犯の認知件数・検挙人員・発生率(認知件数の人口10万人当たりの比率をいう。)の推移を示したものである(巻末資料I-1参照)

I-1図 刑法犯の認知件数・検挙人員・発生率の推移

 なお,本章における刑法犯の各統計数値については,昭和30年以前は,14歳未満の者による触法行為を含んでいる。
 刑法犯の認知件数は,昭和23年及び24年に160万件台に達した後,いったんは減少したものの,29年以降増減を反復しながら,45年に193万2,401件のピークに達した。これは,主として交通関係業過の増加によるものであり,その後一時160万件台にまで減少したが,50年以降ほぼ一貫して増加している。平成5年以降は240万件台で推移し,8年には最高値を更新した。
 交通関係業過を除く刑法犯の認知件数は,昭和23年にはほぼ160万件であったが,その後減少して,26年以降40年までは,おおむね130万件台後半で推移した。41年に130万件を割り,さらに,48年には120万件を割って底となったが,49年に増加に転じ,以降多少の起伏を示しながらも増加を続け,平成8年には最高値に達している。
 刑法犯の検挙人員は,昭和21年以降おおむね増加し,45年に107万3,470人と最高に達した後減少した。しかし,55年以降は,おおむね緩やかな増加傾向にある。
 交通関係業過を除く刑法犯の検挙人員は,昭和25年の60万7,769人を最高に,その後は多少の起伏はあるものの,ほぼ減少傾向を示し,平成になってからはおおむね30万人前後で推移している。
 刑法犯の発生率は,昭和23年の2,004を最高にその後低下し,26年以降はほぼ横ばいが続いたが,40年代に入って交通関係業過の増加により上昇し,45年に1,863とピークに達した。名の後一時減少したものの,55年以降はおおむね上昇傾向にある。また,交通関係業過を除く刑法犯の発生率は,23年の2,000を最高に,以降低下し,48年には1,091となったが,49年以降はおおむね上昇傾向にあり,平成4年以降は1,400台で推移している。
 刑法犯の検挙率は,昭和20年代前半は50%台であったが,その後上昇し,62年に73.5%と最高に達した後,63年以降低下傾向にある。また,交通関係業過を除く刑法犯の検挙率は,28年の70.4%を最高とし,以降おおむね低下傾向を示している。
 平成8年における刑法犯について見ると,[1]認知件数は246万5,503件(前年に比べ2万9,520件増)で,うち交通関係業過を除く件数は181万2,119件(同2万9,175件増),[2]検挙件数は138万9,265件(同1万6,948件減)で,うち交通関係業過を除く件数が73万5,881件(同1万7,293件減),[3]検挙人員は97万9,275人(同9,096人増)で,うち交通関係業過を除く人員は29万5,584人(同2,332人増),[4]発生率は1,959(同19増)で,うち交通関係業過を除く発生率が1,440(同20増),[5]検挙率は56.3%(同1.4ポイント減)で,うち交通関係業過を除く検挙率は40.6%(同1.6ポイント減)となっている(警察庁の統計による。)。
 平成8年における刑法犯認知件数を罪名別に見ると,I-2図のとおりであり,窃盗が最も多く,次いで,交通関係業過,横領(遺失物等横領を含む。),詐欺,器物損壊等,傷害,恐喝等の順となっている(巻末資料I-2参照)

I-2図 刑法犯認知件数の罪名別構成比

I-3図 刑法犯検挙人員の罪名別構成比

 同年における刑法犯検挙人員を罪名別に見ると,I-3図のとおりであり,交通関係業過が最も多く,次いで,窃盗,横領(遺失物等横領を含む。),傷害,恐喝,詐欺等の順となっている(巻末資料I-3参照)
 I-4図は,昭和41年以降の交通関係業過を除く刑法犯検挙人員に占める少年,女子,60歳以上の高齢者について,それぞれの比率を見たものである。

I-4図 交通関係業過を除く刑法犯の少年・女子・高齢者の構成比の推移

 少年比は,昭和52年までは30%台で推移していたが,53年以降起伏を示しながらもおおむね上昇し,平成元年に57.4%と最高に達した後,6年までは減少した。7年,8年は,それぞれ前年より上昇し,8年は49.2%となっている。
 女子比は,昭和41年の10.7%から53年の19.1%まで毎年上昇し,その後18%台から19%台で推移していたが,63年に20%を超え,平成元年に21.2%に達した。その後5年までは低下し,6年以降上昇に転じ,8年には20.5%となっている。
 60歳以上の者の占める比率(高齢者比)は,昭和41年の1.9%から61年の4.7%までほぼ毎年上昇し,その後一時低下したものの,平成3年以降上昇に転じ,8年には7.3%と最高値に達した。
 平成8年の交通関係業過を除く刑法犯の男女別検挙人員は,男子が23万4,918人,女子が6万666人であり,また,同年における14歳以上の男女別人口10万人当たりの検挙人員(人口比)は,男子が448.5人,女子が109.7人となっている。