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 平成 8年版 犯罪白書 第3編/第9章/第4節/3 

3 科刑状況等

 1810年に施行された刑法典(いわゆるナポレオン刑法典)に代わり,1994年3月から新しい刑法典が施行された。それによると,殺人は,故殺(meurtre)には30年の懲役又は無期懲役,謀殺(assassinat)には無期懲役が定められている。また,我が国の強盗致死に該当する犯罪には,無期懲役及び100万フランの罰金が定められている。
 III-97表は,懲役刑又は禁錮刑が科される重罪(crime)である殺人及び強盗について,統計資料が入手できた1992年の科刑状況を見たものである。

III-97表 殺人及び強盗の科刑状況 フランス(1992年)

 死刑については,1981年10月から廃止され,既に確定している死刑判決は,無期懲役刑又は無期禁錮刑に代替された。
 なお,フランス刑法では,仮出獄,刑の停止又は分割,外出許可等に関する適用を一定期間は受けることができない「保安期間」(periode de surete)という制度を設けており,その期間は,刑期の2分の1,無期懲役では18年と定められているが,裁判所の特別な判決があれば,刑期の3分の2,無期懲役は22年まで延長し,あるいは期間を短縮することもできるとされている。ただし,重罪院(cour d′assises)は,殺人の被害者が15歳未満の場合及び強姦・拷問等を伴う場合については,保安期間を30年まで延長し,無期懲役を言い渡す場合には,仮出獄等を一切認めない旨の特別の決定を行えるものの,有罪言渡し後30年を経過した時点で,医学の専門家による鑑定を棄施し,裁判所組織の頂点に位置する破棄院(courdecassation)において,その決定を取り消すことが可能である。
 III-55図は,1980年から1994年までの間の,無期刑受刑者数の推移を示したものであるが,年により変動はあるものの,増加傾向が認められる。

III-55図 無期刑受刑者収容人員の推移 フランス(1980年〜1994年)