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 平成 8年版 犯罪白書 第3編/第8章/第3節/3 

3 まとめ

 調査結果の概要は,以下のとおりである。
[1] 被害者遺族が被る日常生活面の影響を見ると,近隣との関係にかかわるものが目立つ一方,集計する際に設けたどのカテゴリーにも属さない「その他の生活面での影響」が最多数を占めた。しかも,その内容は多岐にわたっていた。
[2] 職業・収入上の影響を被害者遺族の続柄別に見ると,配偶者,特に事件により夫を失った妻の場合に影響を被っているものが多かった。
[3] 精神的影響を見ると,多くの被害者遺族が精神的被害を被っていると述べており,その比率は半数以上に及んでいる。続柄別にみると,被害者遺族が配偶者や親である場合にその影響を被っている者の比率が高かった。
[4] 被害者遺族の加害者に対する処罰感情は厳しく,その感情が表明された時期が判決の確定前という一時期に限定されていることに留意する必要があるが,大多数が死刑を含む重い刑によって処罰されることを望み,また,社会復帰についての意見が不詳の者を除いた被害者遺族238人中200人(84.0%)が社会復帰に反対していた。
[5] 加害者が被害者に行った慰謝の措置を見ると,382人中113人(29.6%)の被害者遺族は謝罪があったと述べており,57人(14.9%)の被害者遺族は香典等として金品の支払いがあったと述べている。また,382人中49人(12.8%)の被害者遺族が加害者から損害賠償の申出があったと述べており,そのうち29人(382人中の7.6%)の被害者遺族は損害賠償の約束が成立していた。
[6] 謝罪の有無別,香典等の有無別及び損害賠償の約束の有無別に被害者遺族の加害者に対する処罰感情を見ると,謝罪及び香典等の有無別では処罰感情に大きな差が認められなかったが,損害賠償の約束の成立の有無別では差が認められた。
[7] 損害賠償の約束の成否を被害者・加害者の面識の有無別に見ると,被害者と加害者とが面識を有している場合の方が損害賠償の約束が成立したとする被害者遺族の比率が高かった。
 この調査結果から見ると,調査対象期間が判決の確定前という限定はあるが,被害者遺族は日常生活面でも精神的にも大きな影響を被っており,加害者に対する被害者の感情も極めて厳しいこと,慰謝の措置もほとんど受けていないなどの実態が明らかになっている。