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 平成 8年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/3 

3 科刑状況

(1) 刑種別状況
ア 死  刑
 II-9表は,昭和40年以降平成元年までの5年間ごとと2年から6年までの各年の第一審の裁判における死刑言渡し人員を罪名別に見たものである。6年の死刑言渡し人員は,殺人で2人,強盗致死で6人の合計8人である(巻末資料II-4参照)。

II-9表 罪名別第一審の死刑言渡し人員

イ 無期懲役刑
 平成6年の第一審の裁判における無期懲役の言渡し人員は45人で,罪名別に見ると,殺人13人,強盗致死32人となっている(巻末資料II-4参照)。
ウ 有期懲役・禁錮刑
 平成6年の地方裁判所及び簡易裁判所における有期の懲役・禁錮の科刑状況を刑期別に見ると,刑期が1年以上2年未満の者が2万9,944人(51.5%)と最も多く,次いで,2年以上3年以下,6月以上1年未満が,それぞれ1万57人,1万50人(各17.3%)とほぼ同数,,6月未満5,364人(9.2%)となっており,刑期が3年を超える者は2,627人(4.5%)にとどまっている。そのうち刑期が10年を超える者は131人(0.2%)で,罪名別に見ると,殺人91人,強盗致死傷21人等となっている(巻末資料II-4参照)。
 昭和35年以降における有期懲役・禁錮確定人員中の執行猶予率の推移は,II-12図のとおりである。懲役に対する執行猶予率は,35年の51.5%から若干の起伏を示しながら推移し,平成7年は60.7%となっている。禁錮に対する執行猶予率は,懲役に対するものよりも高く,昭和35年から46年まではやや下降したが,それ以降上昇し,平成7年は93.6%となっている。

II-12図 有期懲役・禁錮確定人員中の執行猶予率の推移

 II-13図は,最近10年間の初度・再度別執行猶予確定人員を見たものである。初度の場合は同時に保護観察に付するか否かは裁判所の裁量によるが,再度の執行猶予判決の場合は,必ず保護観察に付される。平成7年における初度の執行猶予人員は3万5,955人(執行猶予確定人員の98.0%)で,うち保護観察に付された者は,4,084人(初度の執行猶予人員の11.4%)である。また,再度の執行猶予人員は742人(執行猶予確定人員の2.0%)である。
 II-10表は,最近3年間の執行猶予取消人員を取消事由別に見たものである。取消人員は,平成7年には前年より229人(5.7%)増加して4,223人となっており,取消事由は,再犯により禁錮以上の刑に処されたことによるものが95.5%と,圧倒的多数を占めている。
 なお,ある年次における執行猶予確定人員と,その年次における執行猶予取消人員とでは,その対象が異なるので,前者に対する後者の比率は,厳密な意味での執行猶予取消率とは言えないが,執行猶予取消しのおおよその傾向を知るため,従来からこの比率を算出している。これによれば,平成7年の執行猶予取消率は11.5%,保護観察付き執行猶予者の再犯による取消率は25.6%である。

II-13図 初度・再度別執行猶予確定人員

II-10表 取消事由別執行猶予取消人員

エ 罰  金
 II-11表は,平成6年の,第一審の裁判(略式命令を含む。)における罰金の科刑状況を見たものである。5万円未満の罰金に処された者の合計数は総数の36.9%,さらに,10万円未満の罰金に処された者の合計数は総数の87.0%を占めているが,そのうちの98.6%までが道交違反によるものである。
 また,20万円以上の罰金に処された者は総数の5.7%であるが,そのうち業過が79.7%を占めている。
 罰金の科刑状況を罪名別に見ると,道交違反が総数の87.8%を占め,以下,業過8.6%,傷害0.8%等となっている。

II-11表 罪名別罰金の第一審科刑状況

(2) 各種事件の科刑状況
ア 薬物犯罪
 II-14図は,覚せい剤取締法違反及び麻薬取締法違反により第一審で有罪判決の言渡しを受けた者のうち,執行猶予を言い渡された者の比率を昭和50年から平成6年までについて見たものである。

II-14図 覚せい剤取締法違反及び麻薬取締法違反の第一審執行猶予率の推移

イ 外国人犯罪
 II-15図は,最近10年間の地方裁判所・簡易裁判所による通常第一審における外国人事件(外国人が被告人となった事件をいう。以下,本項において同じ。)及び通訳・翻訳人の付いた外国人事件の有罪人員の推移を見たものである。

II-15図 外国人事件及び通訳・翻訳人の付いた外国人事件の有罪人員の推移

 地方裁判所・簡易裁判所による通常第一審における外国人事件及びそのうち通訳・翻訳人の付いた外国人事件の有罪人員は,近年,いずれも増加傾向にあり,特に通訳・翻訳人の付いた外国人事件の有罪人員は,平成元年以降急増し,昭和61年からの10年間で13.8倍となっている。平成7年の通訳・翻訳人の付いた外国人事件の有罪人員は,前年より276人(5.1%)増加して5,641人となっており,有罪人員総数の9.4%,外国人事件の有罪人員の81.6%を占めている(最高裁判所事務総局の資料による。)。
 平成7年の地方裁判所・簡易裁判所による通常第一審における通訳人の付いた外国人被告人の言語別終局人員の構成比を見たのが,II-16図である。

II-16図 通訳人の付いた外国人被告人の言語別構成比

 平成7年の地方裁判所・簡易裁判所による通常第一審における通訳・翻訳人の付いた外国人事件の科刑状況は,無期懲役6人(前年4人),有期懲役5,618人(同5,351人),有期禁錮6人(同7人),罰金9人(同3人)となっている。さらに,通訳・翻訳人の付いた外国人と日本人に分けて,有期懲役・禁錮の刑期別構成比を見ると,いずれも1年以上2年未満の刑期の比率が最も高く,それぞれ61.3%,50.4%を占める。通訳・翻訳人の付いた外国人では,2年以上3年未満の刑期,日本人では6月以上1年未満の刑期が,これに次いでいる。また,執行猶予率は,通訳・翻訳人の付いた外国人事件では90.1%で,懲役に対するものが90.1%,禁錮に対するものが100%であるのに対し,日本人が被告人となった事件では58.6%で,懲役に対するものが57.0%,禁錮に対するものが91.6%となっている(最高裁判所事務総局の資料による。)。