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 平成 8年版 犯罪白書 第1編/第2章/第3節/1 

第3節 少年非行

1 概  説

 少年法第3条における家庭裁判所の審判に付すべき非行少年の概念は,以下のとおりである。
[1] 犯罪少年
 14歳(刑事責任年齢)以上20歳未満の罪を犯した少年
[2] 触法少年
 14歳未満で,刑罰法令に触れる行為をしたが,行為者が刑事責任年齢に達しないため刑法上の責任を問われない少年
[3] 虞犯少年
 保護者の正当な監督に服しない性癖,正当な理由がなく家庭に寄り付かないこと,不良な者との交際,自己又は他人の徳性を害する性癖のあること,などの事由があって,性格・環境に照らして,将来,犯罪や刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年
(1) 少年刑法犯
 戦後の少年非行の推移は,刑法犯全体について見ると,昭和26年,39年,58年をピークとする三つの波に分けて概観することができるが,本項では,交通関係業過を除く少年の刑法犯検挙人員について見ることとする。
 なお,本節では,犯罪少年・触法少年の検挙及び補導を併せて「検挙」と呼び,虞犯少年の「補導」と区別することとする(巻末資料I-13参照)。
 I-38図は,昭和41年以降の交通関係業過を除く刑法犯の少年・成人別検挙人員及び少年比(成人及び触法少年を含む全検挙人員中に占める少年刑法犯検挙人員の比率)の推移を,I-39図は,少年について,年齢層別検挙人員の推移を,それぞれ示したものである(巻末資料I-14参照)。

I-38図 交通関係業過を除く刑法犯の少年・成人別検挙人員及び少年比の推移(昭和41年〜平成7年)

I-39図 交通関係業過を除く少年刑法犯の年齢層別検挙人員の推移

 平成7年の交通関係業過を除く少年刑法犯検挙人員の罪名別構成比を見ると,I-40図のとおりで,窃盗が66.4%(9万9,076人)と大多数を占めている。横領は17.9%を占めるが,その大部分は放置自転車の乗り逃げである。年齢層別・罪名別検挙人員の構成比で見ると,どの年齢層においても窃盗の占める比率が最も高いが,中でも触法少年の場合は78.7%と最も高い(巻末資料I-15参照)。

I-40図 交通関係業過を除く少年刑法犯検挙人員の罪名別構成比

(2) 少年特別法犯
 I-4表は,最近5年間における交通関係法令違反を除く少年特別法犯の警察による送致人員を罪名別に示したものである。平成7年の送致人員は,前年と比べて2,336人の減少となっている。7年の罪名別構成比を見ると,毒劇法違反が67.1%で最も多く,次いで,覚せい剤取締法違反が10.3%となっている。前年と比べ,毒劇法違反が3.0ポイント低下している反面,覚せい剤取締法違反が3.8ポイント上昇しており,依然として,この二つの罪名で交通関係法令違反を除く少年特別法犯送致人員の約8割を占めている。

I-4表 少年特別法犯の罪名別送致人員

(3) 虞  犯
 I-5表は,最近5年間における虞犯の,態様別に見た家庭裁判所終局処理人員の推移を示したものである。平成6年における虞犯の総数は857人で,その内訳を見ると,家出が最も多く,次いで,交友不良,不純異性交遊,怠学,夜遊びの順となっている。また,虞犯総数に占める女子の比率は,男子より高く,6年には60.9%となっている。
 なお,虞犯少年の年齢層別構成比は,男女共に年少少年が最も高く,男子で46.0%,女子で51.9%を占め,次いで,中間少年が男子で29.0%,女子で39.3%となっており,年長少年は,それぞれ16.4%,6.5%となっている。

I-5表 虞犯の態様別家庭裁判所終局処理人員