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 平成 8年版 犯罪白書 第1編/第1章/第3節 

第3節 諸外国の犯罪動向との対比

 本節においては,我が国の犯罪動向の特徴を見るために,入手し得た公的資料の範囲内で,諸外国の犯罪の動向について概観する。
 今回,比較対象国として選定したのは,アメリカ,連合王国(ただし,資料の関係上イングランド及びウェールズに限る。以下,本節においては「イギリス」という。),ドイツ,フランスの4か国である。
 我が国とこれら4か国それぞれにおける,主要な犯罪の認知件数の合計,主要な犯罪の認知件数の人口10万人当たりの比率(発生率)及び認知件数に占める検挙件数の比率(検挙率)を対比してみることとする。
 言うまでもなく,特定の犯罪の発生率及び検挙率のみによって犯罪動向を即断することは適当ではなく,さらには,我が国とこれら各国においては,犯罪とされるものの範囲や犯罪構成要件を異にし,また,統計の取り方も同一ではないため,正確な比較・検討は困難である。しかし,各国の犯罪動向を概括的に把握するとともに,我が国と各国の統計数値を比較することは,我が国の犯罪動向を国際的な視点から分析する上で有益であると考える。
 I-23図は,1985年から1994年までの10年間について,各国の公的資料に掲載された主要な犯罪の認知件数の合計数の推移を見たものである。
 1985年の認知件数を100とする指数で1994年の認知件数を見ると,ドイツが155,イギリスが147,アメリカが113,我が国が111,フランスが109となっている。なお,ドイツについては,1990年10月3日に旧ドイツ民主共和国を編入し,犯罪統計では1991年から旧ドイツ民主共和国に相当する地域で生じた犯罪を含めるようになり,1990年以前は同地域の数字を含んでいないので,この指数によって他の国と比較することは困難である。

I-23図 主要な犯罪の認知件数の推移

 I-24図は,1993年と1994年の各国の主要な犯罪の発生率及び検挙率を見たものである。これらの統計数値によれば,我が国の発生率は,5か国の中では最も低く,我が国の検挙率は,1994年においては,アメリカ,イギリス及びフランスよりは高い水準にあるが,ドイツよりはやや低くなっている。

I-24図 主要な犯罪の発生率及び検挙率

 なお,罪名別の犯罪動向に関して,殺人及び強盗については,第3編第9章を,窃盗については,巻末資料I-9をそれぞれ参照されたい。