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 平成 7年版 犯罪白書 第4編/第9章/第2節/2 

2 取締り及び処罰の状況

 関税消費税庁の1993-1994会計年度年次報告書によって,同会計年度において連合王国に密輸入された規制対象薬物についてその主な密輸出地を見ると,コカインはコロンビア,ヘロインはパキスタン・アフガニスタン・イランのいわゆる黄金の三日月地帯といわれる地域を含む3か国,大麻はスペインを始めとする欧州連合(EU)諸国とモロッコ,覚せい剤及びMDMA等の向精神性の薬物はオランダ等の欧州連合諸国となっている。
 また,密輸入に使われた手段を見ると,38.4%が車両,37.9%が航空機,9.6%が船舶,0.6%が手荷物,0.6%が郵便物,12.9%が不明となっている。
 IV-40表は,1984年及び1989年から1993年までの5年間における,主な規制対象薬物の関税消費税庁や警察等の捜査機関による押収量の推移を見たものである。毎年,大麻の押収量が他の規制対象薬物に比して極めて多くなっているが,ヘロインや覚せい剤の押収量も増加傾向にある。また,1993年における規制対象薬物の押収総件数は8万5,876件となっており,そのうち大麻が6万9,349件(総件数の80.8%)と大部分を占めており,以下,覚せい剤1万1,632件(同13.5%),ヘロイン3,679件(同4.3%),コカイン2,983件(同3.5%),L S D2,513件(同2.9%),M D M A2,341件(同2.7%),メサドン620件(同0.7%),モルヒネ141件(同0.2%),あへん64件(同0.1%)と続いている。

IV-40表 主要薬物押収量

 IV-41表は,1984年及び1989年から1993年までの5年間における薬物犯罪の検挙人員を,違反態様別に見たものである。検挙人員の総数は毎年増加しており,1993年には6万8,044人に達し,1984年の2.70倍,1989年の1.77倍となっている。各年共に所持事犯が圧倒的多数を占め,1993年は6万82人と検挙人員総数の88.3%を占めている。所持事犯の中では,大麻の所持が多数を占めており,1993年は5万366人と所持事犯総数の83.8%を占めている。また,所持と共に,供給目的所持及び供給の検挙人員も,この10年間における増加が著しい。

IV-41表 薬物犯罪の違反態様別検挙人員

 なお,1984年から1993年までの10年間における薬物犯罪による検挙人員の推移を年齢層別に見ると,1984年においては,21歳以上25歳未満の者が26.7%と最も多く,次いで17歳以上21歳未満の者が25.7%を占めていたが,その後若年層の占める比率が次第に高くなっており,1993年においては,17歳以上21歳未満の者が31.1%を占め,次いで21歳以上25歳未満の者の25.4%となっている。この間,17歳未満の者の占める比率も2.8%から6.2%に上昇している。
 IV-42表は,1984年及び1989年から1993年までの5年間において薬物犯罪により検挙された者について,処分内容別人員と各処分内容別人員が総数に占める比率の推移を見たものである。我が国の起訴猶予処分に相当する警察による警告処分(caution)で処理されて裁判に至らない者の比率は,1984年の8.5%から1993年の52.2%にまで大きく上昇している。また,裁判において有罪とされた者では,拘禁刑(成人)・拘禁処分(青少年)の実刑に処された者の比率は,1991年まで下降傾向にあったが,1992年及び1993年はわずかながら上昇している。拘禁刑の執行を全部猶予された者と罰金刑に処された者の比率は,この10年間でいずれも大きく下降している。これに対し,社会奉仕命令や保護観察命令・監督命令を受けた者の比率は,近年上昇傾向にある。
 IV-43表は,1984年及び1989年から1993年までの5年間において,薬物犯罪により拘禁刑(成人)・拘禁処分(青少年)の実刑に処された者の刑期別構成比の推移を見たものである。2年以下の刑期の判決が減少し,代わって,2年を超え5年以下の刑期の判決が増加している。
 IV-45図は,1992年6月30日現在における薬物犯罪受刑者総数約3,200人について,違反態様別及び規制対象薬物別の人員を見たものである。違反態様別では,受刑者数の多いものから,輸入・輸出,供給目的所持,供給,所持の順,規制対象薬物別では,大麻,コカイン,ヘロイン,覚せい剤,L SDの順となっている。

IV-42表 薬物犯罪の処分内容別人員

IV-43表 薬物犯罪により実刑を言い渡された者の刑期別構成比

IV-45図 薬物犯罪による刑務所収容人員