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 平成 7年版 犯罪白書 第4編/第7章/第3節/1 

第3節 少年院における処遇

1 薬物の濫用防止に関する教育

 第2節で明らかなように,少年院在院者には多くの薬物濫用経験者がおり,これに対し,少年院ではこれら薬物の濫用防止に関する教育を幅広く行っている。これらを大別すると,次のとおりである。
 [1] 薬物濫用の害等に関する知識を普及させるために実施している啓発活動
 [2] 薬物非行にかかわる問題性に焦点を当て,集団に対して働き掛けを行う薬物濫用防止教育(以下「薬物問題指導」という。)
 [3] 個人の薬物濫用問題に応じた働き掛けを行う個別指導
 法務総合研究所では,少年院における薬物濫用防止に関する教育についての実態調査を,平成7年に実施した。
 IV-27表は,平成7年4月30日現在,少年院で実施している薬物濫用防止に関する教育の状況を見たものである。
(1) 啓発活動
 啓発活動を行っている施設は35庁であり,薬物濫用歴の有無にかかわらず,在院者全員を対象に指導を実施している。指導に当たっては,講義や視聴覚教材(映画,VTR等)を利用した指導(以下「視聴覚教育」という。)が行われる頻度が高い。一般予防の立場から行われる啓発活動は,年間を通じて適宜実施されているが,「世界麻薬乱用撲滅デー」や「世界エイズデー」等に合わせて実施し,その際に薬物濫用防止ポスターや標語の作成を行う施設もある。中心的な指導内容は,薬物濫用の実態や薬物濫用が心身に及ぼす悪影響についてである。指導の主体は教育部門の職員であるが,少年院の医師,保健所職員,篤志面接委員等が講師として参加し,より広い視野に立った啓発活動を展開している施設もある。

IV-27表 薬物濫用防止に関する教育実施状況

(2) 薬物問題指導
 薬物問題指導は,薬物問題を改善するための教育計画に基づき,集中的かつ継続的に実施される集団指導であり,各施設で充実化への努力がなされている。
 この指導は50庁で実施されており,うち,37庁では薬物濫用歴をもつ者が対象とされている。実施時期は,最も教育期間が長く,在院者が精神的にも安定する中間期教育過程において実施している施設が50%と最も多く,小集団編成(平均11.6人)となっている。週1回実施している施設が72%と最も多く,1指導期間(延べ平均12.4時間)は,平均約10単元(1単元平均約70分)の授業から構成されている。指導に当たっては,講話や視聴覚教育に加えて,集団討議やロールプレイング等を組み合わせ,内容に応じた効果的な指導方法を各施設で工夫している。指導の主体は教育部門の職員であり,内容的には,啓発活動で指導している薬物濫用の実態,薬物が心身に及ぼす悪影響についてのほか,薬物と暴力組織との関連,薬物の具体的な断絶方法についても指導していることが特徴である。
(3) 個別指導
 個別指導は41庁で実施されている。薬物濫用歴をもつ者を対象に実施している施設が33庁と最も多い。指導方法としては,面接指導,作文指導等が主である。個々の少年の薬物濫用の態様や悩み等に応じ,教育部門職員や少年院の医師が個別に面接を行うなど,こまやかな指導を実施している。