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 平成 6年版 犯罪白書 第4編/第9章/第3節/2 

2 司法共助

 我が国と外国とが,刑事裁判関係書類の送達や証拠調べに関して協力する司法共助には,次の四つの場合がある。
 [1] 我が国の裁判所からの嘱託に基づいて,外国の裁判所が行う場合
 [2] 我が国の裁判所からの嘱託に基づいて,外国に駐在する我が国の領事等が行う場合
 [3] 外国の裁判所からの嘱託に基づいて,我が国の裁判所が行う場合
 [4] 外国の裁判所からの嘱託に基づいて,我が国に駐在する外国の領事等が行う場合
 こうした刑事裁判関係書類の送達や裁判段階における証拠調べに関する国際間の協力に関する根拠規定としては,二国間条約として「日本国とアメリカ合衆国との間の領事条約」と「日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約」の二つの条約があるほか,我が国は,イタリア等の国との間で二国間の取極を行っている。これら条約と取極による司法共助のほか,外交折衝による個別的な合意により,上記四つの種類の司法共助が行われている。
 このうち,上記[3]の,外国の裁判所からの嘱託に基づいて,我が国の裁判所が司法共助を行う場合については,外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法(明治38年法律第63号)が,外国の裁判所から我が国の裁判所に対し,外交機関を経由するなど一定の条件を具備した嘱託がなされたときは,我が国の裁判所は,民事及び刑事の訴訟事件に関する書類の送達及び証拠調べにつき,国内法に従って法律上の「輔助」を行うことを規定している。
 最高裁判所事務総局刑事局の資料によって最近10年間における司法共助の状況を見ると,まず,我が国の裁判所が外国の裁判所に対して嘱託した司法共助については,昭和59年から平成3年までの間にはこの種の嘱託はなかったが,4年と5年に各1件書類送達の嘱託がなされている。4年には,中国の裁判所に対して,被告人の召喚状の送達の嘱託がなされ,5年には,オーストラリアの裁判所に対して証人召喚状の送達の嘱託がなされている。
 IV-44表は,最近10年間における,我が国の裁判所の嘱託に基づいて外国駐在の我が国の領事等が行った刑事裁判関係書類の送達について,嘱託件数,送達書類の内容及び送達先国を見たものである。10年間で合計15件の書類が送達されており,うち14件が証人召喚状であり,また,うち13件が送達先国をアメリカとするものである。なお,この10年間に,我が国の裁判所の嘱託に基づいて外国駐在の我が国の領事等が証拠調べ等を行った例はない。
 IV-45表は,最近10年間における,外国の裁判所から我が国の裁判所に対し嘱託された司法共助の,受託件数,嘱託国及び受託内容を見たものである。外国の裁判所からの司法共助要請については,書類の送達について以前から受託していたが,証拠調べについても昭和63年以降毎年受託している。受託した証拠調べはすべて証人尋問である。平成5年においては,スイス及びアメリカの裁判所から証拠調べ等の嘱託を受けたものが各1件あり,2件とも,同年中に外国裁判所ノ嘱託ニ因ル共助法に基づいて処理されている。

IV-44表 我が国の裁判所からの嘱託に基づいて外国に駐在する我が国の領事等が行なった刑事裁判関係書類の送達件数

IV-45表 外国の裁判所から我が国の裁判所に対し嘱託された司法共助の受託件数