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 平成 5年版 犯罪白書 第4編/第8章/第1節/3 

3 イギリス

 1982年から1991年までの間のイギリスにおける交通事故の発生件数,死傷者数及び事故率は,IV-24表のとおりである。

IV-24表 交通事故の発生件数,死傷者数及び事故率イギリス(1982年〜1991年)

 イギリスにおいては,軽微な交通犯罪に対しては,警察による警告(warning)がなされる。
 また,反則金(fixedpenalty)制度が導入されており,反則金の対象となる犯罪(fixedpenaltyoffence)に関しては,違反者に対し,警察官により反則金通告書(fixedpenaltynotice)が交付され,期限内に反則金を支払うことにより手続は終了する。他方,違反署が,期限内に裁判所の審問を請求した場合は,裁判所において手続が進められる。違反者が,期限内に支払をせず,かつ,裁判所の審問を請求しなかった場合は,反則金額の5割増しの金額が裁判所に罰金(fine)として登録されて執行されることになる。
 さらに,交通犯罪が訴追される場合は,犯罪が正式起訴犯罪(indictable offence)か略式起訴犯罪(summaryoffence)かなどに応じ,治安判事裁判所(magistrates′ court)又はクラウン裁判所(CrownCourt)において審理等がなされ,罰金,拘禁刑,保護観察命令等(probationorder,super-Visionorder),社会奉仕命令(communityserviceorder),出頭所出頭命令(attendancecentreorder)等が言い渡される。なお,罰金額の上限は,正式起訴犯罪については無制限とされ,略式起訴犯罪については,標準等級に応じて,その上限が定められている。
 ところで,イギリスにおいては,近年の交通事故の多発や交通事情の悪化等を背景として,11991年道路交通法」(RoadTrafficAct1991)が制定された。同法においては,運転者の主観よりは客観的な運転基準により犯罪の成立を認め得るよう,従前の無謀運転罪(recklessdriving)及び無謀運転致死罪を改め,危険運転の意義につき規定した上で,危険運転罪(danger-ousdriving)や危険運転致死罪(causingdeathbydangerousdriving)を新たに設けるほか,飲酒運転等致死罪(causingdeathbycarelessdriving whenundertheinfluenceofdrinkordrugs)等を新設するなどして罰則を強化するとともに,ロンドン首都圏の指定駐車場所における駐車違反を非犯罪化し,これに対しては,制裁金(penaltycharge)を科する旨規定されている。
 「1991年道路交通法」で新たに設けられた危険運転致死罪については,正式起訴(indictment)に基づく審理により,5年以下の拘禁刑若しくは無制限の罰金又はその併科,併せて2年以上の免許はく奪(disqua11fication)及び運転適性試験の受験を命ずることとされ,また,危険運転罪については,正式起訴に基づく審理により,2年以下の拘禁刑若しくは無制限の罰金又はその併科,あるいは治安判事裁判所の審理(summarytrial)により,6月以下の拘禁刑若しくは法定最高額以下の罰金又はその併科,併せて12月以上の免許はく奪及び運転適性試験の受験を命ずる旨規定されている。
 さらに,飲酒運転等致死罪や道路利用者に対する危険罪(causingdanger toroad-users)が新設され,飲酒運転等致死罪については,正式起訴に基づく審理により,5年以下の拘禁刑若しくは無制限の罰金又はその併科,併せて2年以上の免許はく奪を命ずることとされ,また,道路利用者に対する危険罪については,正式起訴に基づく審理により,7年以下の拘禁刑若しくは無制限の罰金又はその併科,あるいは治安判事裁判所の審理により,6月以下の拘禁刑若しくは法定最高額以下の罰金又はその併科とする旨規定されている。
 他方,ロンドン首都圏の指定駐車場所における駐車違反については,刑事罰ではなく,制裁金を科することとして非犯罪化され,これに対しては,自治体に属する交通監視員(parkingattendant)が取り締まることとされ,駐車違反に対し,制裁金通告書(penaltychargenotice)を交付するなどして,制裁金を科する旨規定されている。
 1982年から1991年までの間の治安判事裁判所及びクラウン裁判所における交通犯罪の科刑状況は,IV-25表のとおりである。

IV-25表 治安判事裁判所及びクラウン裁判所における交通犯罪の科刑状況