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 平成 5年版 犯罪白書 第4編/第7章/第2節/2 

2 過失の態様等と科刑

 IV-19表は,罪名と言渡し刑期の関係を見たものである。実刑群,執行猶予群共に,刑名では,道路交通法違反は懲役がほとんどであり,両群の間に特徴的な差異は認められない。しかし,刑期の関係については,実刑群では道路交通法違反の「6月以下」と「3月以下」が,執行猶予群では道路交通法違反の「1年以下」と「6月以下」が,それぞれ多くなっている。

IV-19表 罪名別刑名別言渡し刑期

 交通関係業過を対象に過失の態様及び傷害の程度と科刑の関係を見ると,両群の間に特徴的な差異が認められたのは,次の三つの点である。
 実 刑 群   [1] 「前後・左右安全不確認」が多い
         [2] 傷害の程度で「3月を超える」が多い
 執行猶予群   「運転開始・中止義務違反」が多い
 IV-50図は,交通関係業過を対象に過失の態様と科刑の関係を見たものである。実刑群では,  「前後・左右安全不確認」が32.7%で,執行猶予群の23.9%を上回っている。また,執行猶予群では,「運転開始・中止義務違反」が32.6%で,実刑群の25.1%を上回っている。

IV-50図 過失の態様

 なお,「運転開始・中止義務違反」の内訳では,「酒気帯び」によるものが最も多く,執行猶予群では21.7%,実刑群では12.1%で,「酒酔い」によるものがこれに次ぎ,執行猶予群では8.7%,実刑群では6.0%である。
 特に,実刑群のほぼ3人に1人が前後・左右安全の確認義務を怠り,事故を起こし実刑を言い渡されていることは,注目に値する。
 IV-51図は,交通関係業過による傷害の程度と科刑の関係を見たものである。傷害の程度で「3月を超える」は,実刑群では28.4%,執行猶予群では11.1%で,実刑群の方が高くなっている。この「3月を超える」の21人の内訳を見ると,懲役が14人で3分の2を占めている。すなわち,実刑群では結果の重大さのゆえに重い刑事責任を負わされていることがうかがわれる。

IV-51図 傷害の程度