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 平成 5年版 犯罪白書 第4編/第2章/第1節/2 

2 交通事故発生の背景

 我が国における交通事犯や事故激増の背景には,経済高度成長とそれに伴う急激なモータリゼーションがあり,道路の整備状況,交通安全対策,自動車保有台数,自動車運転免許保有者数などが密接に関連しているといわれている。警察庁の統計によって,これらの事情を見てみる。
 IV-4図は,昭和41年以降の交通事故による死傷者数,自動車保有台数,自動車運転免許保有者数及び自動車走行距離の推移を,それぞれ41年を100とする指数によって示したものである。

IV-4図 交通事故死傷者数と自動車保有台数等の推移(昭和41年〜平成4年)

 交通事故による死傷者数は,昭和45年ころまでは,自動車の保有台数,運転免許保有者数及び走行距離の増加とほぼ平行して推移しているが,その後,走行距離,自動車保有台数,運転免許保有者数などの増加にもかかわらず,死傷者数は減少ないし横ばいで推移していたが,最近,再び増加の傾向にある(巻末資料IV-2表参照)。
 昭和30年から40年代中ころにかけての交通事故増加の背景には,我が国の経済高度成長がもたらした急成長の車社会に対して,運転者の技術及び安全知識の不足,車の安全対策の不備,道路の未整備などが大きな要因となったと考えられるが,40年代後半以降は,自動車保有台数及び運転免許保有者数などの増加にもかかわらず,交通事故による死傷者数は減少ないし横ばい状態にあることから,これは,その後の交通関係法令の整備,道路の整備,車の安全対策の整備などが効を奏したものと考えられる。ただ,今日,交通犯罪が再び問題となってきた背景には,昭和63年に,交通事故による死亡者が50年以来13年ぶりに1万人を超え,その後も増加しており,平成4年には前年を更に上回ったこと,4年の交通事故による死亡者が10代,20代の青少年(36.9%)と60歳以上の高齢者(32.9%)で7割近くを占めていること,自動車運転中の事故死は青少年に多く,高齢者のそれは,歩行中及び自転車乗用中のものが多くなっていることなどの事情があり,交通犯罪の問題が再び注目されている。