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 平成 5年版 犯罪白書 第2編/第3章/第1節/5 

5 婦人補導院における処遇

 売春防止法5条違反(売春をする目的で,公衆の目に触れるような方法で勧誘又は客待ちをしたり,勧誘するため公共の場所で人につきまとうなどの行為)で起訴された20歳以上の女子が有罪となり,裁判所が自由刑の執行を猶予する場合には,補導処分に付することかできる。
婦人補導院は,婦人補導院法に基づき,補導処分に付された成人の女子を収容し,その更生のために必要な補導を行う施設として,東京,大阪及び福岡に設置されたが,収容人員の減少等のため,平成4年末では,東京に1庁となっている。
 平成4年に婦人補導院に新たに収容された者はいなかった。なお,今まで年間の新収容人員が最も多かったのは昭和35年の408人であるが,57年以降は毎年一けた台が続き,最近10年間の平均は3.5人である。
 婦人補導院の収容期間は6か月を限度とし,在院者の処遇に当たっては,規律ある,明るく開放的な環境の下で,指導職員との人間的触れ合いを深めながら,在院者個々の特性に応じた指導を行うこととしている。具体的には,売春に対する価値観と態度の変容を目標として,視聴覚教材を利用した指導及び個別面接を行っているほか,編物,裁縫,炊事,洗濯,園芸作業などを通じて,日常生活の生活技術の習得や勤労意欲の喚起を図り,また,生け花や絵画などによる情操面の指導を行っている。さらには,婦人相談センターの相談員による保護相談,院外の公共施設の利用や施設見学などを通じて,社会適応性を高めるよう工夫している。医療では,更生の妨げとならないよう,特に性病の治療に重点を置いている。また,社会復帰のための諸施策については,退院又は仮退院後の帰住先の環境に恵まれない者が多いので,関係機関との連携を十分に保ちながら推進している。