前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 4年版 犯罪白書 第4編/第4章/第2節/2 

2 女子比の高い罪名

 (IV-56図)
 我が国で女子比の高い罪名を挙げると,窃盗27.6%,覚せい剤取締法違反17.7%,薬物犯罪17.3%,詐欺14.2%などである。殺人18.5%(実数229人),放火17.8%(実数109人)は女子比は高いが実数は少ない。女子の社会進出との関係が問題とされる業務上横領,背任は女子比も実数もともにそれぞれ10.8%(実数65人),8.7%(実数6人)とごく少数である。窃盗のうち万引きだけを取り上げると女子比は56.6%である。
 経年変化を見ると,窃盗の女子比は昭和50年(1975年)以降,約25%前後であるのに対して,薬物犯罪は昭和45年(1970年)に14.2%(実数315人)(そのうち,覚せい剤取締法違反は11.7%(実数190人))であったものが,昭和55年(1980年)には薬物犯罪15.3%(実数3,247人)(そのうち,覚せい剤取締法違反は15.6%(実数3,100人))に達し,その後は男子の検挙人員が著しく減少したにもかかわらず,女子の検挙人員はわずかに減少したにとどまり,女子比は高くなっている。
 女子比の高い罪名を諸外国と比較すると,韓国を除く各国はいずれも窃盗の女子比が高い。

IV-56図 罪名別検挙人員及び女子比

 統計上,万引きを区分している我が国,イギリス,ドイツ,フランス,スウェーデンにおける万引きの女子比を比較すると,我が国が56.6%であるのに対し,これら4か国の女子比は,比較的低く40%弱である。
 薬物犯罪については,我が国において実数が漸減しているにもかかわらず女子比は漸増しているのと反対に,イギリス,ドイツ,フランスでは実数が増加しているにもかかわらず男子の増加が女子のそれを上回り,女子比は低下しているのが注目され,さらにアメリカでは,実数,女子比共に増加している。
 なお,韓国では,薬物犯罪の男女合わせた検挙者総数が3,047人と極めて少ない。
 その他,我が国における傷害,強盗の女子比は,それぞれ6.5%,3.7%と低く,かつ,それぞれその約8割,約6割5分が少年によって犯されているのと異なり,諸外国における傷害に占める女子比は,韓国では18.3%と高く,アメリカ,イギリス,ドイツ,フランスでも10%を超え,成人の割合が,イギリスでは約6割,スウェーデン(少年の割合についての統計はない。)を除きその他の国では8割を超える。