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 平成 4年版 犯罪白書 第4編/第3章/第5節/2 

2 女子成人の保護観察

 本項においては,女子成人の保護観察対象者として女子仮出獄者及び女子保護観察付執行猶予者を取り上げ,その動向及び保護観察の実施結果を男子成人と対比してみることとする。なお,両対象者には,保護観察の新規受理時点において少年であった者が若干含まれている。
(1) 保護観察対象者の動向
ア 新規受理人員と年齢
 IV-30表は,昭和41年以降5年ごとに新規受理人員の男女・年齢層別構成比及び新規受理人員総数に対する女子比を示した敏のである。まず,新規受理人員と女子比を見ると,平成3年は昭和41年に比べて,仮出獄者では,新規受理人員において男子が減少し,女子が増加し,女子比において2倍以上となっているのに対し,保護観察付執行猶予者では,新規受理人員において男女共に減少し,女子比において,どの年次でも仮出獄者の場合に比べ高くはなっているものの,仮出獄者の場合ほど上昇していない。
 次いで,年齢層別構成比を見ると,仮出獄者,保護観察付執行猶予者共に,どの年次においても,40歳以上の中高年齢者の占める比率が女子において男子よりも高い。しかし,年齢層別構成比の推移を見ると,仮出獄者,保護観察付執行猶予者共に,40歳以上の者の占める比率が,男子では急激に上昇しており,男女間の差が縮小する傾向にある。
イ 罪  名
 IV-31表は,昭和41年以降5年ごとに新規受理人員の男女・罪名別構成比を高い順に第1位から第5位まで示したものである。仮出獄者,保護観察付執行猶予者の男女共に,最近の犯罪傾向を反映して,覚せい剤取締法違反の順位が上位を占めているが,特に,女子はその傾向が強く,56年以降一貫して仮出獄者,保護観察付執行猶予者共に,第1位となっている。一方,女子における推移を見ると,仮出獄者,保護観察付執行猶予者共に,売春防止法違反の順位が大きく低下している。

IV-30表 成人の新規受理保護観察対象者の男女・年齢層別構成比及び女子比

IV-31表 成人の新規受理保護観察対象者における構成比の高い罪名

IV-32表 成人の新規受理保護観察対象者の男女別薬物等使用歴の有無及び不良集団関係の有無

 なお,構成比の推移を見ると,41年以降を通じて,仮出獄者,保護観察付執行猶予者共に,女子は男子に比べ殺人,放火などが高く,業過,道路交通法違反,傷害などが低い。
ウ 薬物等使用と不良集団
 IV-32表は,平成3年における新規受理人員について,薬物等使用歴の有無及び不良集団関係の有無を示したものである。まず,薬物等使用歴の有無を見ると,「あり」とされる者の比率は,仮出獄者,保護観察付執行猶予者共に,女子が男子に比べて格段に高い。また,薬物等の種類別に見ると,仮出獄者,保護観察付執行猶予者の男女共に,覚せい剤の比率が最も高い。
 次いで,不良集団関係の有無を見ると,「あり」とされる者の比率は,仮出獄者,保護観察付執行猶予者共に,女子が男子に比べて低くなっている。
 また,不良集団の種類別に見ると,仮出獄者,保護観察付執行猶予者の男女共に暴力組織の比率が最も高い。

IV-24図 成人の保護観察終了者の男女別再犯率の推移

(2) 保護観察の実施結果
ア 保護観察中における再犯率
 IV-24図は,昭和54年以降に保護観察を終了した人員について,保護観察中における再犯率(第2編第4章第2節参照)の推移を示したものである。これによると,再犯率は,仮出獄者,保護観察付執行猶予者の男女共に,全体的に低下する傾向にあって,どの年次においても,女子が男子に比べて低い。
 なお,保護観察付執行猶予者の保護観察期間が一般に長いこともあって,その再犯率が高くなっているが,男女共に最近の10数年にわたってほぼ低下し続けていることは,注目すべきことである。

IV-25図 成人の保護観察終了者の男女別成績良好率の推移

イ 保護観察終了時における成績良好率
 IV-25図は,昭和54年以降に保護観察を終了した人員について,保護観察終了時における成績良好率の推移を示したものである。これによると,成績良好率は,仮出獄者,保護観察付執行猶予者の男女共に,全体的に横ばいないし上昇傾向にあって,保護観察付執行猶予者における54年及び55年を除くと,女子が男子に比べ高い。