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 平成 4年版 犯罪白書 第4編/第3章/第1節/1 

第3章 女子犯罪者の処遇

第1節 女子犯罪者と検察及び裁判

1 概  説

 本節においては,女子犯罪者に対する検察及び裁判の状況を男子犯罪者と比較しながら概観する。
 そのため,検察関係の統計数値は,検察統計年報によったほか,必要に応じて,同年報の基礎となっている被疑者調査票に基づいて調査した結果を用いることとした。また,裁判関係の統計数値は,司法統計年報によったほか,最高裁判所から,通常第一審における有罪判決中犯時20歳以上の者に対する有期自由刑判決を,実刑判決と執行猶予判決とに分けた上,それぞれについて男女別及び年齢層別に人員及び刑期合計を算出した資料(以下「最高裁判所の資料」という。)の提供を受けて,これに基づいて調査した結果を用いることとした。

IV-11表 業過を除く少年一般保護事件の男女別家庭裁判所終局処理総人員

 なお,本節においては,被疑者・被告人の年齢は,犯行時を基準としたものであり,起訴・不起訴の処理時あるいは判決宣告時を基準としたものではない。
 被疑者が少年の場合,第3編第2章第1節において説明したとおり,検察官は,犯罪の嫌疑があると思料するとき及びそうでなくても審判に付すべき事由があると思料するときは,処遇意見を付けて事件を家庭裁判所に送致しなければならない。
 平成2年の家庭裁判所における業過を除く少年一般保護事件の終局処理総人員を男女別に見ると,IV-11表のとおりであり,女子比は終局処理総人員総数の24.2%であるが,刑事処分相当を理由とする検察官送致(いわゆる逆送)では4.9気,また,少年院送致では11.9%にすぎない。女子終局処理総人員の93.4%は,審判不開始又は不処分の決定を受けている。
 被疑者が成人の場合,検察官は,犯罪の嫌疑があると認めるときは,事案に応じ,起訴猶予処分,略式手続による起訴(略式命令請求)及び公判手続による起訴(公判請求)の3種類の処分のうちいずれか一つを選択する。検察統計年報の基礎となっている被疑者調査票に基づいて,平成3年に道交違反及び業過を除く罪名により上記3種類の処分を受けた犯時20歳以上の被疑男女別家庭裁判所終局処理総人員者を,男女別に,その処分別構成比を年齢層別に調査した結果は,IV-5図のとおりであり,どの年齢層をとって見ても,女子は,男子より,起訴猶予処分の構成比が高く,公判請求される者の構成比が低い。

IV-5図 男女別に見た年齢層別起訴猶予,略式命令請求及び公判請求人員の構成比

 そこで,同じく被疑者調査票に基づいて調査した結果から,最近の3年間に公判請求(ただし,道交違反及び業過を除く。)された者の起訴罪名のうち人数の多いものを男女別に比較してみると,IV-12表のとおりであり,女子は,いずれの年も,覚せい剤取締法違反で公判請求される者が最も多く,次いで窃盗,詐欺の順となっているのに比べ,男子はいずれの年も,窃盗で公判請求される者が最も多く,次いで覚せい剤取締法違反,詐欺の順となっている。
 そこで,以下,刑法犯については窃盗と詐欺を中心に,また,特別法犯については覚せい剤取締法違反の,犯時20歳以上の女子犯罪者に対する検察及び裁判の状況を見ることとする。

IV-12表 男女・罪名別公判請求人員