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 平成 3年版 犯罪白書 第4編/第4章/第3節/2 

2 意識調査から見た受刑者の特質

(1) 年齢意識
 年齢に関する意識については,二つの質問を用意して調査を行った。まず,「老人というのは,何歳以上の人をいうと思いますか」と尋ね,「50歳以上」から5歳刻みと「80歳以上」の計7選択肢から択一で回答を求めた。その結果はIV-54図に示すとおりである。各年齢群を通じて,「60歳以上」,「65歳以上」又は「70歳以上」を老人と思う受刑者が多く,また,初入者,再大者共に,年齢の高い群になるほど,より高い年齢の選択肢を老人とみなす傾向がある。65歳以上を老人とみなす者の構成比を見ると,50歳以上の高年群では,初入者が66.7%,再入省が57.7%,35〜49歳の中年群では,初入者が63.2%,再入者が54.0%,20〜34歳の若年群では,初入者が55.7%,再大者が47.3%となっており,どの年齢群においても,再入者の方が初入者よりも低い年齢で老人とみなす傾向がある。
 一般高齢者(60歳以上)の年齢意識については,昭和61年実施の総務庁長官官房老人対策室による調査「老人の生活と意識に関する国際比較調査」(以下「老対室調査」という。)に報告がある。本調査と老対室調査の結果を比較してみると,70歳以上を老人とみなす者の構成比は,一般高齢者では45.2%,60歳以上の高齢初入受刑者では33.8%,高齢再入受刑者では15.8%であり,このことは,一般高齢者に比べて高齢受刑者,特に再大者において,老人とみなす年齢を70歳以上に高める者の少ないことを示している。

IV-54図 「老人」とみなす年齢段階

 次に,IV-55図は,「あなたは,年を取った自分のことを考えることがありますか」と尋ね,「よくある」,「ときどきある」,「あまりない」及び「ない」の中から択一回答を求めた結果を示したものである。これによると,年齢の高い群ほど年を取った自分のことを考えることがあるとする者が多くなっている。また,すべての年齢群において,初入者に比して再入者の方が年を取った自分のことを考えることが「よくある」とし工いる。
(2) 生活意識
 日々の受刑生活を送る上で心の支えになる重要な条件として,頼りにできる人物の存在が考えられるが,今回調査の受刑者の場合はどうであろうか。
 親族と親族以外の人物に分けて尋ねてみた。質問の形式は,「あなたが,家族や親戚の中(家族や親戚以外の人)で相談したり頼れる人はだれですか」と問い,重複を許して回答を求めた。それらの結果は,IV-56図に示すとおりである。

IV-55図 自分の老後を考える程度

 家族や親戚の一中で頼れる人としては,励入者,再入者共に,年齢の高い群ほど子供を選択する率が高くなり,親を選択する率が低下している。また,再入者において,「だれもいない」とする者の率は年齢の高い群ほど高くなっている。配偶者を選択する率は,50歳以上の高年群初入者が最も高く(48.7%),次いで35〜49歳の中年群初入者,中年群再入省となっている。50歳以上の高年群に注目すると,初入者は,再入者に比して,頼れる人として,親がほぼ同率であるのを除き,どの対象者についても選択率が高くなっており,再入者の頼れる人が「だれもいない」の選択率が最高であることと考え合わせて,高年群再入者は,親族との関係が疎遠になる傾向がうかがえる。なお,総じて,他の年齢群においても,家族との人間関係では,初入者,の方が再入者よりも緊密さが保たれているといえよう。

IV-56図 受刑者が頼りにする親族・親族以外の人物

 次に,親族以外の人物の中で頼れる人としては,どの年齢群でも親しい友人を選択する者が最も多くなっている。ただし,選択率は,年齢の高い群ほど低下し,また,再入者は初入者に比してどの年齢群でも低率である。頼れる人が「だれもいない」とする者は,どの群においても1割を超しているが,特に50歳以上の高年群再入者では2割にも達する。その他,高年群では,雇主を選択する者が初入者,再入者でほぼ同率であるが,保護司・更生保護会の職員を選択する者は再入者の方が初入者よりもやや高い。また,保護司・更生保護会の職員を頼る傾向は,初入者,再入者共に,年齢の高い群ほど強くなっている。組関係者を頼る者の比率はどの年齢群においても再大者が初入者よりも高く,この比率は,年齢の高い群ほど低下する。
 以上の結果から,年齢群を問わず,初入者が身近な者との関係を維持しているのに対して,再入者では身近な者を含めて人間関係全般が希薄になることが分かり,特に,その程度は年齢の高い群ほど大きくなる傾向がうかがえる。
 次に,「あなたにとって一番大切なものは何ですか。また,二番目に大切なものは何ですか。一つずつ答えてください」と尋ね,10選択肢,すなわち,[1]配偶者・子供など家族とのつながり,[2]仕事をすること,[3]生活が安定していること,[4]健康づくりに励むこと,[5]友人・仲間とのつながり,[6]世の中の役に立つこと,[7]財産を築くこと,[8]信仰に生きること,[9]趣味に生きること,及び[10]出世すること,を用意して回答を求めた。
 IV-57図は,一番大切なものとして選択された事項をまとめて示したものである。50歳以上の高年群では,初入者,再入省共に,選択率の高い順に上位4位までが,「家族とのつながり」,「仕事」,「生活の安定」,「健康づくり」の順になっていることに変わりはないが,選択率の高低で両群を比較すると,「家族とのつながり」で初入者が再入者よりも,「仕事」,「生活の安定」,「健康づくり」では再入者が初入者よりも比率が高くなっている。また,「家族とのつながり」では,初入者に各年齢群の間で変化があまり見られないのに対して,再大者は年齢の高い群ほど低下している。その他,前記の順で選択率が上昇するのは「仕事」,「健康づくり」などであり,下降するのは「仲間とのつながり」,「財産を築くこと」などである。

IV-57図 価値観に関する意識(一番大切なもの)

 IV-34表は,大切なものとして一番目と二番目に選択された事項の組合せの中から,50歳以上の高年群初大者の選択率の高い上位15組合せを取り上げ,これを基準として,すべての組合せ(90個)に占めるその組合せの比率を群ごとに,また,群内での比率の順位を高い順に付して示したものである。これによっても明らかなように,「家族とのつながり」,「仕事」,「生活の安定」及び「健康づくり」の四つが大切とするものの基幹になっている。
 年齢の影響に注目すると,初入者,再入省共に,年齢の高い群ほど「健康づくり」を重視し,「仲間とのつながり」を重視しなくなる傾向がうかがえる。
 結局,50歳以上の高年群の初入者は,「家族とのつながり」を最も大切にした上で「仕事」,「生活の安定」及び「健康づくり」をも重視するのに対して,再入者は,「家族とのつながり」もさることながら「仕事」,「生活の安定」及び「健康づくり」により強い関心をもっているといえよう。
(3) 犯行及び罪の償いに関する意識
 罪を犯し受刑生活を送ることになって,受刑に至った犯行の責任,受刑に至った理由及び罪の償いについて,受刑者が自分なりにどのような意識をもっているかを三つの質問で調べてみた。
 IV-35表は,「今回の事件の責任はだれにあると思いますか」と問い,[1]すべては自分に責任がある,[2]大部分は自分に責任があるが,周りの人にも少しは責任がある,[3]自分の責任と周りの人の責任は半々だと思う,[4]少しは自分にも責任があるが,大部分は周りの人に責任がある,及び[5]すべては周りの人に責任がある,の5選択肢から択一で回答を求めた結果を示している。
 これによると,「すべて自分」又は「大部分自分」とする者は,50歳以上の高年群初入者でほぼ9割に達し,他の群では9割を超える。更に詳細に見ると,高年群での選択順位は,初入者,再入者共に,高い順に,「すべて自分」,「大部分自分」,「自分と周りの人と半々」,「大部分周りの人」,「すべて周りの人」の順(初入者の4番目と5番目は同率)になっており,選択率で比較すると,初入者の方が再入者よりもやや自責の念が弱い傾向がうかがえる。なお,50歳以上の高年群は,「すべて自分」又は「大部分自分」とする者で見ると,初入者,再入者共に,他の年齢群に比して自責の念は弱くなっている。20〜34歳の若年群と35〜49歳の中年群では再入者の方が初入者よりも総じて自責の念は弱く,特に中年群において差が顕著である。高年群の初入者が自己弁解的であるのは,犯行について弁解の余地がある事情をもっている,自尊心を保とうとする心理がはたらいているなどの事情によることが考えられる。

IV-34表 価値観に関する意識(一番大切なものと二番目に大切なものの組合せ)

 さて,受刑に至った理由について受刑者はどのような意識をもっているのであろうか。「あなたが,今回刑務所に入るようになった訳は,次のうちのどれに当たりますか」と尋ね,[1]怠けぐせや遊びぐせがついていた,[2]生活が苦しかった,[3]人にだまされた,[4]やけを起こしてしまった,[5]悪い仲間に誘われた,[6]恨みを晴らしたかった,[7]かけ事に夢中になり過ぎていた,[8]家族とうまくいかず,家が面白くなかった,[9]酒におぼれていた,[10]覚せい剤・麻薬・シンナーに手を出してしまった,[11]仕事上の人間関係がうまくいかなかった,[12]やくざに入っていた,及び[13]異性関係で失敗した,の選択肢から最も当てはまるものをーつだけ選択するよう回答を求めた。その結果を初入者,再入者別に高年群の選択率の高い順に,かっ,年齢群で比較できるように作成したのがIV-58図である。

IV-35表 本件犯行の責任に関する意識

 これによると,50歳以上の高年群では,選択率の高い順に(グラフの左から右へ),初入者には,「酒におぼれて」,「生活が苦しくて」,「人にだまされて」などとする者が多く,「やくざに入って」,「恨みを晴らしたくて」,「悪い仲間に誘われて」などとする者が少ない。一方,再入者には,「薬物に手を出して」,「酒におぼれて」,「怠けぐせがついて」などとする者が多い。

IV-58図 受刑に至った理由に関する意識

 次に,50歳以上の高年群につき,初入者の方が再入者よりも選択率の高いものは,「人にだまされて」,「酒におぼれて」,「かけ事に夢中になり過ぎて」,「異性関係で失敗して」などであり,他方,再大者の方が初入者よりも選択率の高いものは,「薬物に手を出して」,「やくざに入って」,「悪い仲間に誘われて」,「怠けぐせがついて」などである
 さらに,年齢の高い群ほど選択率が上昇するものには,初入者,再入者共に,「酒におぼれて」,「生活が苦しくて」,「人にだまされて」,「かけ事に夢中になり過ぎて」などがあり,下降するものとして,「怠けぐせがついて」,「薬物に手を出して」,「やくざに入って」などがある。
 以上の結果から,受刑者自身の意識に関していえば,50歳以上の高年群の場合では,初入者も再入者もそれぞれに経済的困窮を理由とする者が少なくないことに加えて,アルコール,覚せい剤又はかけ事といったし癖・性癖が重要な意味をもっていること,また,初入者はだまされたとの意識が,再入者では怠惰・遊興習慣が意識されていることなどが分かり,これらは,高年群受刑者の効果的な分類処遇に当たっての示唆を与えている。
 続いて,「あなたは,罪の償いについて,どう思いますか」と問い,[1]裁判所の処分に従うだけでよい,[2]施設収容によってすべて終わる,[3]釈放時までに被害の賠償をすればよい,[4]被害の賠償だけでなく更生する必要がある,[5]あやまるだけでよい,及び[6]何もする必要はない,の中から択一で回答を求めた結果がIV-36表に示してある。
 まず,選択順位で見ると,すべての群で「被害の賠償だけでなく更生する必要がある」が第1位,「裁判所の処分に従うだけでよい」が第2位,「施設収容によってすべて終わる」が第3位となっており,この三つで全体の95%前後を占めている。ただし,選択率で見ると,どの年齢群でも,「被害の賠償だけでなく更生する必要がある」では,初入者の方が再入者よりも高い値を示し,「裁判所の処分に従うだけでよい」と「施設収容によってすべて終わる」では,再入者の方が初入者よりも高い値を示している。また,「裁判所の処分に従うだけでよい」では,初入者,再大者共に,年齢の高い群ほど選択率は上昇しており,「被害の賠償だけでなく更生する必要がある」では,初入者において,年齢の高い群ほど選択率はわずかに下降している。

IV-36表 罪の償いに関する意識

 以上を総合して,受刑者は,初入者の方が再入者よりも罪の償いについて真剣な意識をもっていること,しかしながら,年齢要因を考慮に入れると,50歳以上の高年群の初入者は,20〜34歳の若年群及び35〜49歳の中年群の初入者に比較して罪の償いに関する意識が薄らぐ傾向が認められることなどが指摘できる。
(4) 将来に関する意識
 将来の生活設計等について受刑者がどのような見通しをもっているかについて,本調査の結果から述べてみる。
 まず,すべての年齢群の受刑者に対して,「あなたが,出所後の生活で不安に思っていることは何ですか」と問い,[1]健康がすぐれないこと,[2]経済的に不安なこと,[3]家族との関係がうまくいかないこと,[4]友人がいないこと,[5]生きがいがないこと,[6]異性との関係のこと,[7]被害者との関係のこと,[8]近隣の人間関係のこと,[9]住居のこと,[10]組を離脱すること,[11]仕事のこと,[12]前科のこと,及び[13]不安なことは特にない,の選択肢から重複を許して回答を求めた。
 IV-59図は,回答結果を初入者,再大者の別に年齢群で比較できるように作成したものである。50歳以上の高年群について見ると,選択率の高い上位3位は「経済的不安」,「仕事上の不安」及び「健康上の不安」であり,経済,仕事及び健康が高年群受刑者に共通した基本的不安の源泉をなしている。また,これらは,いずれも選択率において再入者の方が初入者よりも高くなっている。初入者は第4位以下を「前科のこと」,「住居のこと」,「家族との関係」,「被害者との関係」などの順にしているのに対して,再入省では,「住居のこと」,「前科のこと」,「家族との関係」,「友人がいないこと」などの順にしている。初入者では「前科のこと」や「被害者との関係」に不安を抱いているのと対照的に,再入者は,「前科のこと」や「被害者との関係」よりも「住居のこと」を優先して心配していることが分かる。また,「近隣との関係」については初入者の,「組からの離脱」については再入省の不安が高いのも特徴である。
 初入者,再入者共に,年齢の高い群ほど不安が増大するものには,「健康上の不安」や「家族との関係」などがあり,一方,減少するものには,「異性との関係」や「組からの離脱」などがある。
 先に「一番大切なもの」として選択された事項が脅かされる場合に不安が高まると同時に,不安をもたらす要因が初入者と再大者とで差があることも分かる。

IV-59図 出所後の生活に対する不安の内容

 次に,「あなたは,老後働けなくなったら生活費はどうするつもりですか」との質問も全年齢群の受刑者に対して行った。この間には,[1]主として,子供に面倒をみてもらう,[2]主として,年金(公的年金)や恩給などに頼る,[3]主として,自分の貯蓄(個人年金を含む)や財産で暮らす,[4]福祉(生活保護など)の世話になる,[5]当てがない,及び[6]分からない,の選択肢を用意して択一回答を求めた。その結果を示したのがIV-60図である。
 50歳以上の高年群では,選択率の高い順に,初入者が,「年金や恩給などに頼る」,「自分の貯蓄や財産で暮らす」及び「子供に面倒をみてもらう」となり,この三つで約75%に達するが,再入者では,これらの合計は約45%にしかならない。一方,再入者には「福祉の世話になる」,「当てがない」及び「分からない」とする者が多く,この三つで約55%を占めるが初入者では約25%である。「福祉の世話になる」,「当てがない」及び「分からない」とする者が初入者よりも再大者に多い傾向は,他の年齢群でも認められる。初入者は年齢の高い群ほど「年金や恩給などに頼る」とする者が増加するが再入者では増加していないこと,他方,「福祉の世話になる」とする者は再入者が年齢の高い群ほど増加するのに対して初入者は増加していないことなどの結果も得られた。20〜34歳の若年群で初入者,再入者共に,「分からない」とする者の率が高いのは老後についての切実な意識がないためと考えられる。総じて,初入者が老後の生計についての備えを整えているのに対して,再入者は見通しをもたないか福祉に依存する考えをもっているといえる。

IV-60図 老後の生活費

IV-61図 自活に自信をもてる年齢段階

 次に,50歳以上の高年群受刑者に対して二つの質問をした。まず,「あなたは,何歳くらいまで自分で働いて自分の生計を立てていける自信がありますか」と尋ねた結果がIV-61図に示してある。これによると,初入者,再入者共に65歳くらいとする者が約40%を占め最も多いが,70歳くらいとする者は,初入者では約30%いるのに対して再大者では約5ポイント下回るなど,再入省は初入者に比べて生計を自分で立てられるとする年齢を低く見積もっている。なお,今でも自信がないとする者は,再入者で初入者の2倍強になっている。総じて,初入者の方が再入者よりも高齢まで自分で働いて自分の生計を立てていける自信をもっていることが分かる。
 次いで,年金の受給について,「あなたは,公的年金がもらえますか」と尋ね,「もらえる」,「もらえるかもしれない」,「もらえない」及び「分からない」の4選択肢の中から択一で回答を求めた。その結果を示したのがIV-62図である。

IV-62図 公的年金受給の見通し

 「分からない」と「もらえるかもしれない」とした者の比率は,初入者と再入者間でほとんど差が見られないが,「もらえる」とした者は,初入者では約半数いるのに対して,再入者では2割強にすぎず,50歳以上の高年群受刑者,特に再入者の備えの不足が認められる。
(5) 自己意識
 本調査では,受刑者の自己意識について10項目の質問をした。質問及び回答の形式は,それぞれの項目について,「あなたは,最近,次のように思うことがありますか」と問い,「よくある」,「ときどきある」,「あまりない」及び「まったくない」の中から択一回答を求めるものである。10項目の質問とそれに対する回答結果(各年齢群,初入者・再入者別に「よくある」とする回答の全回答に占める比率)を示したのがIV-63図である。
 これによって順次述べると,「世の中の人々は互いに助け合っていると思う」者は,50歳以上の高年群と35〜49歳の中年群で初入者の方が再大者よりも多く,そのように思う者の比率は,初入者,再入者共に,年齢の高い群ほど上昇する。「自分は頼りにされていると思う」者は,50歳以上の高年群と35〜49歳の中年群で初入者の方が再入者よりも多く,そのように思う者の比率は,初入者,再入者共に,年齢の高い群ほど上昇する。「世の中は結局金だけが頼りだと思う」者は,すべての年齢群で,再入者の方が初入者よりも多く,再入者では,年齢の高い群ほどそのように思う者の比率が上昇する。
 次に,「今から人生をやり直すのは難しいと思う」者は,すべての年齢群で,再入者の方が初入者よりも多く,そのように思う者の比率は,初入者,再入者共に,年齢の高い群ほど上昇する。「世のΦには自分しか信じるものがないと思う」者は,すべての年齢群で,再入者の方が初入者上りも多く,そのように思う者の比率は,初入者,再入者共に,年齢の高い群ほど上昇する。「毎日の生活の中で寂しいと思う」者は,すべての年齢群で,再入者の方が初入者よりも多くなっている。「自分の性格が,嫌になると思う」者は,すべての年齢群で,再入者の方が初入者よりも多く,そのように思う者の比率は,再入者では年齢の高い群ほど上昇するが,初入者の高年群では上昇していない。

IV-63図 自己意識

 続いて,「自分は世の中から取り残されていると思う」者及び「自分は何をやっても駄目な人間だと思う」者は,すべての年齢群で,再入者の方が初入者よりも多く,そのように思う者の比率は,再入者で年齢の高い群ほど上昇するが初入者ではほとんど変化がない。「自分だけが悪く思われていると思う」者は,すべての年齢群で,再入省の方が初入者よりも多く,そのように思う者の比率は,再入者では年齢の高い群においてわずかに上昇する程度である。
 これまでの結果を整理してみると,年齢要因がはたらくものに,「自分は頼りにされている」及び「世の中の人々は互いに助け合っている」があり,累入要因がはたらくものに,「自分は世の中から取り残されている」,「自分は何をやっても駄目な人間だ」及び「自分の性格が嫌になる」があり,年齢要因と累入要因の両者がはたらくものには,「今から人生をやり直すのは難しい」,「世の中は結局金だけが頼り」及び「世の中には自分しか信じるものがない」があることとなる。すなわち,年齢の高い群ほど,自信・自尊心や連帯感が次第に減退し,また,刑務所への累入によって,自己否定的となり,落ご感を増大させ,年齢層が上がるに従って,また,受刑生活を重ねることによって再起意欲や対人信頼感を失い,孤立・閉鎖的構えを身につけてゆくことが考えられる。
 最後に,「毎日の生活の中で寂しいと思う」者については,60歳以上の受刑者で集計し,老対室調査の一般高齢者と比較してIV-64図に示した。これから明らかなように,受刑者,特に再入受刑者は強い寂りょう感をもっている。
 自己意識と関連して,50歳以上の受刑者に対して,過去を振り返っての感想を尋ねてみた。質問と回答の形式は,「あなたは,これまでの人生を振り返って,いつが一番楽しい(つらい)時期でしたか」と問い,択一で時期の選択を求めたものである。その結果を示したものがIV-65図である。
 「50歳以上」をつらい時期とした者については,調査対象者中にその時期が受刑中の現在に当たる者が多く含まれるので,初入者,再入者共に,つらい時期とする者がそれぞれ41.7%,34.7%と多くなっている。未成年期,20代を楽しかった時期とする者は再入者に多く,30代,40代を楽しかったとする者は初入者に多い。概して,楽しかった時期を,再入者は若い時代とし,30代・ 40代で下降を示すが,初入者は,30代・ 40代でも再入者ほどの下降は見せていない。一方,つらかった時期については,30代とする者が最低となるのは初入者も再入省も同じであり,未成年期,20代をつらかった時期とする者は再入者に多く,40代とする者の初入者と再入者にはほとんど差が見られない。

IV-64図 自己意識(毎日の生活で寂しいと思う程度)