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 平成 3年版 犯罪白書 第1編/第2章/第1節/3 

3 麻薬等事犯

 我が国における麻薬等事犯(麻薬及び向精神薬取締法,あへん法及び大麻取締法の各違反をいう。以下本節において同じ。)について,その検挙状況を見ると,前掲I-19表及び同I-10図[2]に示すとおりである。平成2年においては,総数で,検挙件数2,535件,検挙人員1,971人と,前年に比べて,件数で8.3%,人員で4.5%それぞれ増加している。事犯別で特に注目されるのは,大麻取締法違反の動向であって,昭和52年以降1,000人台の検挙人員が続いており,平成2年では1,620人と,前年に比べて10.2%増加し,麻薬等事犯全体の82.2%を占めている。麻薬及び向精神薬取締法違反による検挙人員は,昭和50年以降で最大となった平成元年とほぼ同数の240人である。
 I-26表は,最近5年間における麻薬等の押収量を示したものである。麻薬等の押収量は,年次による増減が著しいが,平成2年における押収量を見ると,前年に比べて,ヘロイン,大麻は減少しているものの,LSD,コカインかいずれも大幅に増加している。特にコカインは前年比5倍と激増しているのが注目される。

I-26表 麻薬等の押収量(昭和61年〜平成2年)

 麻薬等事犯を,厚生省薬務局及び警察庁保安部の資料によって違反法令別に見ると,次のとおりである。
 平成2年の麻薬及び向精神薬取締法違反による検挙人員は,前年に比べて3.2%減少して240人となっている。違反態様別構成比では,2年においては,所持(43.3%),譲渡・譲受(26.3%),密輸入(出)(24.6%)の各事犯の順に多くなっている。使用事犯は各年次共に少なく,同年は5.8%である。
 また,同年には,密製造事犯で検挙された者はいない。同年における主な違反品目別の検挙人員は,コカイン事犯が前年より17人増の113人,ヘロイン事犯が前年より30人減の68人,LSD事犯が前年より9人減の16人となっている。
 麻薬等事犯のうち,特にコカインについては,検挙人員が前年に比べて17.7%増加しており,また,押収量も史上最高の68.8kgを記録している。前年に引き続きコカインの大量密輸入事犯が多発していること,コカイン事犯検挙人員に占める暴力団員の人員が昭和63年までは1ないし3人であったものが平成元年には22人,2年には28人に増加していることなど,国内にまん延する兆しが認められる。多くの国では,既にコカイン依存者の増加に悩んでおり,国際的にも大きな問題になっている折から,我が国でも今後のコカイン事犯のすう勢には厳重な警戒が必要である。
 平成2年のあへん法違反による検挙人員は,前年に比べて33.9%減少して111人となっている。違反態様別に見ると,そのほとんどが,観賞を目的としたけしの栽培事犯であり,2年では全体の89.2%(99人)を占めている。
 大麻取締法違反について見ると,平成2年の検挙人員は,前年より10.2%増加して1,620人とこれまでの最高になっている。違反態様別の構成比では,所持(58.8%),譲渡・譲受(31.8%),密輸入(出)(7.4%)の順に多くなっている。