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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第6章/第3節/2 

2 少年司法制度

 西ドイツの少年司法制度の根幹をなすものは,少年裁判所法(Jugend-gerichtsgesetz,1953)である。その対象とするものは,行為時14歳以上18歳未満の者(少年Jugendlicher)であるが,18歳以上21歳未満の者(青年Heranwachsender)についても,総合的な見地から判断して,道徳的・精神的発達の観点からいまだ少年と同等であることが明らかな場合,又は行為の種類や動機,諸事情から見て,少年非行として取り扱われるべきときには,少年裁判所法が適用される。行為時14歳未満の者(児童Kind)は,我が国と同様,刑法上責任がない。
 少年裁判所(Jugendgericht)には,次の3種類がある。まず,[1]少年に比較的軽い処分が予想される場合には,区裁判所裁判官である少年係裁判官(Jugendrichter)が単独で審理を行う。次に,[2]区裁判所の少年参審裁判所(Jugendschoffengericht)は,少年係裁判官及び次に述べる少年裁判部の管轄に属しない非行を担当する。さらに,[3]地方裁判所の少年裁判部(Jugend-kammer)は,殺人,強盗致死など,事件が重大なものである場合等を管轄し,また,少年係裁判官及び少年参審裁判所の判決に対する控訴申立てに関しての審理及び裁判を行う権限を有する。なお,少年参審裁判所は,裁判長としての一人の裁判官と二人の少年参審員とから,また,少年裁判部は,裁判長を含む三人の裁判官と二人の少年参審員とから構成される。少年参審員(Jugendschoffen)は,少年福祉委員会の推薦に基づいて選任され,裁判に当たるのは,男女各一人である。

III-113表 特定罪種別検挙人員・少年比・青年比及び人口比西ドイツ(1984年〜1988年)

 なお,検察官は,少年事件についても起訴・不起訴の決定権を有しており,裁判にも立ち会っている。
 有罪と認定された少年(少年裁判所法が適用された青年を含む。以下,本項で同じ。)に対しては,教育処分,懲戒処分又は少年刑が科せられる。
 教育処分(ErziehungsmaBregeln)には,少年の生活態度を規整し,教育を促進するとともに保障すべき指示(居住,就業,交際等の規制)の賦与のほか,教育援助及び教護の措置がある。
 懲戒処分(Zuchtmittel)は,少年刑は必要でないが,少年が行った違法行為を痛切に自覚させなければならない場合に科せられる。懲戒処分には,戒告(Verwarnung),義務の賦課(Auflagen)及び少年拘禁(Jugendarrest)の3種類がある。このうち,義務の賦課は,損害賠償や,公共施設のために一定金額を支払うことなどを内容とするものである。また,少年拘禁には,休日拘禁(毎週の休日につき1回から4回の拘禁),短期拘禁(連続6日以内の拘禁)及び継続拘禁(1週間から4週間の拘禁)の区分が設けられている。
 少年刑(Jugendstrafe)は,少年刑事施設における自由の拘束であり,教育処分若しくは懲戒処分では教育上十分でない場合,又は責任が重大であるため刑罰が必要である場合に科せられる。その刑期は6月から10年までであり,定期刑を原則とするが,少年を教育するのに必要な期間を予見できないときには,最高4年の不定期刑が科せられることがある。
 なお,教育処分と懲戒処分,複数の教育処分又は複数の懲戒処分,及び少年刑と指示の賦与,義務の賦課等は,併せて科することができる。