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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第5章/第2節/2 

2 検  察

 III-55表は,昭和52年及び62年以降3年間の交通関係業過及び道交違反を除く少年被疑事件の検察庁新規受理人員につき,刑法犯,特別法犯及び主要罪名別に,年齢層別構成比を示したものである。受理人員総数は,平成元年には前年より1万7,708人(8.3%)減少して,19万6,898人となっている。その内訳を見ると,刑法犯では,1万6,535人(8.7%)減少して17万2,657人,特別法犯では,1,173人(4.6%)減少して2万4,241人となっている。また,総数に占める刑法犯の比率は,昭和52年が95.3%,62年が88.8%,63年が88.2%であり,平成元年はやや下降して87.7%となっている。元年における主要罪名別内訳を見ると,窃盗が12万5,638人で総数の63.8%を占めており,次いで,傷害・暴行・暴力有為等処罰法違反が合計1万4,290人で7,3,%となっている。元年の総数の年齢層別構成比は,年少少年が41.0%,中間少年が40.1%,年長少年が18.9%となっている。

III-55表 検察庁新規受理犯罪少年の主要罪名・年齢層別構成比(昭和52年,62年〜平成元年)

 平成元年の人員を見やと,年少少年(前年より6,776人・7.8%減),中間少年(同6,152人・7,2%減),.年長少年(同4,780人・11.4%減)のいずれにおいても前年より減少している。また,元年の構成比を見ると,窃盗,傷害・暴行・暴力行為等処罰法違反及び恐喝では,年少少年の比率が高く,強姦・強制猥褻及び覚せい剤取締法違反では,年長少年の比率が高く,強盗では,中間少年の比率が高くなっている。
 成人を含めた検察庁新規受理人員中に占める少年の比率を見ると(II-1表参照),平成元年は,総数では20.5%,刑法犯では25.8%,特別法犯では16.5%となっているしこのうち,少年の比率が高い罪名は,横領(82.6%,前年は78.18%),窃盗(67.7%,同68.3%),恐喝(52.1%,同50.3%)などである。その他の主な罪名の少年の比率を見ると,暴力行為等処罰法違反は44.0%(前年は41.7%),傷害は36.5%(同34.1%),強盗は33.0%(同30.1%),強姦・強制猥褻は29.2%(同30.2%),暴行は25.1%,(同24.2%)などとなっている。
 検察官は,少年疑事件を家庭裁判所へ送致するときは,少年の処遇に関して意見をすることができるが,平成元年における業過,過失致死傷及び道路交通法違反を除く家庭裁判所終局処理人員について,検察官の処遇意見と家庭裁判所の終局処理結果とを年齢層別に対比してみると,III-56表のとおりである。検察官が付した刑事処分相当,少年院送致相当,保護観察相当の各意見の比率と家庭裁判所の終局処理結果の各比率を比べると,刑法犯,特別法犯共に,各年齢層において,家庭裁判所の終局処理結果の各比率は,検察官の付した意見の各比率を下回っている。
 III-57表は,家庭裁判所が検察官に送致したいわゆる逆送事件について,平成元年における検察庁処理状況を罪名別に示したものである。起訴人員総数は,前年より3,100人減少して2万1,348人となっているが,そのうち,97.8%に当たる2万882人は交通関係業過又は道交違反である。起訴のうち,公判請求された少年は772人(3.6%,前年は812人・3.3%)にとどまっており,2万576人(96.4%)は略式手続によって処理されている。

III-56表 年齢層別検察官処遇意見及び家庭裁判所終局処理結果の構成比(平成元年)

III-57表 逆送少年の罪名別検察庁処理人員(平成元年)

 公判請求人員のうちでは,交通関係業過が50.4%(前年は50.6%)と最も多く,以下,,窃盗の11.5%(同15.9%),道交違反の8.5%(同10.7%),傷害の7.6%(同3.3%)の順となっている。なお,覚せい剤取締法違反で公判請求された人員は,昭和53年(33人)以降57年(148人)までは逐年増加していたが,58年(126人)から平成元年(35人)までは連続して減少している。