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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第4章/第3節/3 

3 親子・友達関係の意味

 青少年が日常,身辺的に関係をもつ入物としては,家族,友達,先輩,隣入,教師を始め様々な対象者があるが,ここでは,相対的に重要と考えられる父親,母親,同性の友達,異性の友達,先輩の5者を取り上げて,本調査が行った4種の設問に対する回答(重複回答)結果なIII-50表に示した。

III-38図 親の養育態度

 まず,「気楽に話ができる人」はだれかを尋ねた。一般群で見ると,男女共に,「気楽に話ができる人」は,同性の友達,母親,父親,異性の友達,先輩の順である。非行群では,男女で選択順位に差があり,「気楽に話ができる人」は,男子が,同性の友達,異性の友達,母親,父親,先輩の順であり,女子が,同性の友達,異性の友達,母親,先輩,父親の順である。このように,両群共に,同性の友達を「気楽に話ができる人」の第1順位に挙げているのは共通であるが,非行群においては,男女共に,異性の友達の選択順位・選択率が高く,母親を抜いて第2位であること,一般群の男女及び非行群男子と比較して,非行群女子での父親の選択順位・選択率が最下位・最低であること及び母親の選択率が最低であること,さらに,非行群では,男女共に,一般群に比して先輩の選択率の高いことが注目される。

III-50表 親子・友達関係

 次に,「悩みを打ち明けられる人」は,一般群では,選択順位で男女に差があり,選択率の高い順に,男子では,同性の友達,母親,父親,異性の友達,先輩であり,女子では,同性の友達,母親,異性の友達,先輩,父親である。非行群では選択順位に男女差がなく,同性の友達,異性の友達,母親,先輩,父親の順で選択されている。非行群と一般群で大きな差があるのは,男女共に,非行群が一般群よりも異性の友達と先輩を高率で選択していることである。
 この結果から,「悩みを打ち明けられる人」は,両群共に親よりは友達であり,さらに,友達という場合,一般群では同性の友達を意味し,一方,非行群では同性の友達と同時に異性の友達を意味していることがわかる。
 3番目に,「注意されたらいうことを聞く人」については,まず,一般群では,男子が,父親,母親,同性の友達,先輩,異性の友達の順,女子が,同性の友達,母親,父親,異性の友達,先輩の順で選択率が高い。非行群では,男子が,異性の友達,父親,母親,同性の友達,先輩の順,女子が,異性の友達,同性の友達,先輩,母親,父親の順で選択率が高い。
 ここでも,男女共に,非行群が一般群よりも異性の友達の選択順位を上位に置き,また,その選択率も高いこと,さらに,非行群男子で,一般群に比して両親の選択率が低く,先輩の選択率が高いこと,非行群女子において,両親よりも同性・異性の友達,先輩を上位に選択していることがわかる。つまり,「注意されたらいうことを聞く人」として,一般群が両親を選択する率が高いのに対して,非行群,特に女子では異性の友達を選択する率が高く,両親を選択する率が低くなっているのが特徴である。
 4番目に,「こんな人になりたい」対象を尋ねた結果を見ることとする。まず,一般群では,男子が,父親,同性の友達,先輩,母親,異性の友達の順,女子では,同性の友達,母親,先輩,父親,異性の友達の順で選択率が高い。一方,非行群では,男子が,父親,先輩,母親,同性の友達,異性の友達,女子が,母親,先輩,同性の友達,異性の友達,父親の順で選択率が高い。
 以上から,男子では,一般群,非行群共に,「こんな人になりたい」対象として同性の親を第1順位に挙げており,非行群の方が一般群よりも選択率が高いこと,女子では,非行群が「こんな人になりたい」対象として同性の親を第1順位に挙げるのに対して,一般群では同性の友達を挙げていること,男女共に,非行群が一般群よりも先輩及び異性の友達を「こんな人になりたい」対象として高い率で選択していることがわかる。
 総合的に,対人関係における親密,信頼,依存,従順,同一視などの対象者を考えてみると,一般群の男女が両親及び同性の友達を意味ある人物とするのに対して,非行群の男女が両親にもまして友達,特に異性の友達に重い意味を置いていること,先輩の意味も非行群において一般群よりも重いことがわかる。また,非行群の女子において,父親の意味が総じて軽くなっているのも注目される。