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 平成 2年版 犯罪白書 第2編/第4章/第2節/3 

3 保護観察の実施結果

(1) 保護観察終了時の状況
 平成元年に保護観察を終了した人員の総数は,9万7,438人であり,このうち,交通短期保護観察少年4万4,835人を除いた5万2,603人について,対象者の種類別に保護観察の終了状況を見ると,II-53表のとおりである。
 保護観察処分少年では,解除によって終了した者が68.9%で半数を超えている。一方,再犯等を理由に新たな処分を受けたことによって,保護処分を取り消された者は12.4%である。少年院仮退院者では,満期又は満齢によって終了した者が62.3%を占め,退院によって終了した者が16.9%,戻し収容及び保護処分取消しによって終了した者の合計が20.2%となっており,保護観察処分少年に比して処遇困難な者の多いことを示すものといえる。仮出獄者では,期間満了で終了した者は91.4%で大多数の者は特段の問題がなく終了していることがわかる。仮出獄取消しによる終了者は7.3%で,その内訳は,遵守事項違反によるものが7.0%,再犯によるものが0.3%である。保護観察付執行猶予者では,期間満了による終了者が71.4%である。執行猶予取消しによる終了者は26.8%と高い比率を示しているが,その内訳は,再犯によるものが25.1%,遵守事項違反によるものが1.6%,余罪等によるものが0.1%である。
(2) 保護観察中の再犯等
 平成元年に保護観察を終了した者のうち,交通短期保護観察少年を除いた者について,保護観察期間中に,再度の犯罪・非行により刑事処分(起訴猶予を含む。)又は保護処分を受けた者の比率(以下,本節において「再犯率」という。)を保護観察受理時の罪名・非行名別に見ると,II-54表のとおりである。

II-53表 保護観察の終了状況(昭和63年〜平成元年)

II-54表 保護観察終了者の罪名・非行名別再犯率(平成元年)

 保護観察対象者の種類別に再犯率を見ると,保護観察付執行猶予者が32.0%で最も高く,次いで少年院仮退院者26.7%,保護観察処分少年18.2%,仮出獄者1.0%となっている。
 罪名・非行名と再犯率との関係について見ると,仮出獄者では,保護観察期間中再犯に至る者は少ないものの,殺人や強盗といった重大事犯を犯している者の再犯率が他の罪名のそれと比べるとやや高いこと,保護観察付執行猶予者では,毒物及び劇物取締法違反による者は,再犯に至る者が多いことがわかる。
 II-55表は,最近3年間における保護観察終了者の保護観察中における再犯率を保護観察の種類別に見たものである。平成元年においては,前年と比較して,仮出獄者については変化がないが,他の種類の対象者の再犯率はやや低下している。
 II-56表は,仮出獄者の保護観察期間中及び同期間経過後における刑務所への再入所状況を,満期釈放者のそれと対比して見たものである。昭和58年から62年までの各年間に仮出獄した者のうち,出所後3年目までに24.7%から30.6%の者が再入所している。これを満期釈放者の出所後3年目までに再入所した者の割合(47.4%から50.7%)と比較すると,いずれの年においても,満期釈放者のそれよりもかなり低くなっている。

II-55表 保護観察終了者の保護観察中における再犯率(昭和62年〜平成元年)

II-56表 仮出獄者と満期釈放者の再入所状況(昭和58年〜62年)