前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 2年版 犯罪白書 第2編/第4章/第1節/2 

2 仮出獄の運用

(1) 仮出獄の条件等
 仮出獄は,法定の期間(有期刑については刑期の3分の1,無期刑については10年である。ただし,少年の時懲役又は禁錮の言渡しを受けた者のうち,無期刑については7年,少年法51条により,犯罪時18歳未満で無期刑をもって処断すべきとき,として科せられた10年以上15年以下の有期刑については3年,不定期刑についてはその刑の短期の3分の1である。)を経過した後において,[1]悔悟の情が認められること,[2]更生意欲が認められること,[3]再犯のおそれがないと認められること,[4]社会感情が仮出獄を是認すると認められること,といった事由を総合的に判断し,保護観察に付することか本人の改善更生のために相当であると認められたときに,釈放の日,帰住地等を指定して許可される。
 仮出獄に関しては,本制度の刑事政策的機能をより一層進展させるために,昭和59年3月から仮出獄の早期化と仮出獄率すなわち,満期出獄者と仮出獄者との合計に対する仮出獄者の占める比率の上昇を図るための運用が,積極的に推進されている。
(2) 仮出獄の許否状況
 仮出獄率は,昭和58年以降,若干の起伏を示しながらほぼ横ばいの状況にあるが,平成元年は56.3%で,前年に比して0.9ポイント上昇している。また,最近3年間における仮出獄の許否状況を,刑の種類別,刑期別の棄却率によって見ると,II-44表のとおりであり,無期刑の者に対する棄却率は,元年には,前年に比べ3.2ポイント低下し53.1%となっている。有期刑の者に対する棄却率は,刑期の長い者ほどおおむね高くなる傾向が見られる。なお,有期刑受刑者について,矯正施設の長から地方委員会に対して仮出獄申請がなされる比率(仮出獄申請率)は,昭和61年には61.4%であったが,平成元年には60.7%となっている。

II-44表刑の種類・刑期別仮出獄許否状況(昭和62年〜平成元年)

 次に,最近3年間における刑務所入所度数別の棄却率を見ると,II-45表のとおりである。いずれの年次においても,入所度数の多い者ほど棄却される比率が高いが,平成元年では,前年に比べて,入所度数の多少を問わず棄却率がわずかながら低下している。
 平成元年に仮出獄を許された定期刑受刑者について.執行すべき刑期のうち,現に執行された刑期の比率(以下「執行率」という。)を累犯・非累犯別,刑期別に見ると,II-46表のとおりである。まず,非累犯の総数を見ると,執行率70%以上80%未満の者が45.1%で最も高いのに対して,執行率90%以上の者は,わずか7.7%であり,これに執行率80%以上90%未満の者を加えた執行率80%以上の者は,29.1%と3割弱にとどまっている。次いで,累犯の総数を見ると,執行率80%以上90%未満の者が51.6%で最も高く,執行率90%以上の者が40.5%であり,この両者を合わせた執行率80%以上の者は,92.1%と9割を超えている。このように,非累犯者は,累犯者に比べて,かなり早期に仮出獄を許されていることがわかる。

II-45表 入所度数別仮出獄許否状況(昭和62年〜平成元年)

 次に,刑期別に執行率を見ると,非累犯については,執行率が90%以上である者の割合は,刑期が1年を超え2年以下の者を除き,刑期が長い者ほど高くなる傾向が見られる。累犯についても,刑期が5年を超える者を除き,同様の傾向が見られる。なお,累犯は,刑期の長い者の執行率が高いという傾向が見られる。
 平成元年の刑の執行率を前年と比べると,非累犯の総数では,執行率70%以上の者の占める割合がやや上昇し,同70%未満の者の占める割合がやや低下しているが,累犯の総数では,ほぼ横ばいの状況となっている。

II-46表 定期刑仮出獄者に対する刑の執行状況(平成元年)

(3) 長期刑受刑者の仮出獄
 矯正施設に長期にわたって収容される者は,一般的に,凶悪・重大な犯罪を犯しているため厳しい社会的批判を受けており,また,性格的特性や環境条件等の面で問題のある者が少なくない。このため,地方委員会では,この種受刑者の仮出獄審理に当たっては,本人の心身の状況,被害者感情等を始め関係事項について周到な調査と審理を尽くし,必要に応じて,主査委員による再面接,複数の委員による面接を行い,また,精神医学・心理学等の専門家,検察官,本人の処遇に関係のある協力者などの意見を求めた上で審理決定を行っている。さらに,地方委員会は,その早期釈放と社会への円滑な社会復帰を図るために,本人に対する指導・助言,帰住予定地の環境調整等に格別の配慮を払っている。特に,無期刑及び執行すべき刑期が8年以上の長期刑の受刑者の仮出獄審理においては,保護観察官の準備調査を早くから実施し,主査委員の面接審理を重ねるなどして審理の充実を期している。また,仮出獄を許した者については,原則として,更生保護会(本章第4節参照)に一定の期間(1か月間)居住させて,社会生活機能の回復,就職の援助等を中心とする中間的な処遇(中間処遇)を実施することとされており,仮出獄及び保護観察の運用の一層の適正化が図られている。なお,平成元年に新たに中間処遇の実施対象として仮出獄の許可を受けた者は,前年より18人増え116人である。
 仮出獄を許された無期刑受刑者の刑務所在所期間別人員を,昭和51年から55年まで及び56年から60年までの各5年間の平均並びに61年から平成元年までの各年次について見ると,II-47表のとおりである。各5年平均及び昭和61年から63年までの各年次共に,在所期間が14年を超え18年以内の者が多かったが,平成元年においては,在所期間が18年を超える者が13人中7人(53.8%)となっている。

II-47表 無期刑仮出獄者の在所期間別人員(昭和51年〜平成元年)