次の項目        目次   図表目次   年版選択
 平成 2年版 犯罪白書  

はしがき

 最近における我が国の犯罪情勢は,外国との対比において,比較的良好な状態で推移しているとはいえ,暴力団員による犯罪,薬物事犯等は依然として多発しており,また,過激派によるテロ,ゲリラ事件は凶悪化するなど,昭和の時代から平成の時代に引き継がれた課題は少なくない。なかでも,少年非行の現状について見ると,平成元年の刑法犯検挙人員が前年と比べて減少しているとはいえ,少年の減少の度合いは成人のそれより鈍く,特に,道路上の交通事故に係る過失犯を除いた刑法犯の検挙人員中に占める少年の割合は5割を超えている。また,近年,少年による凶悪な事犯が発生し,少年非行が社会の耳目を集めており,両親のそろった,生活にも困窮していない家庭の少年の非行が増加し,初発型非行に陥る少年と一般少年との境界が不鮮明になりつつあるなど,少年非行問題には,必ずしも楽観を許さないものがある。
 そこで,本白書では,平成元年を中心とした最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概観するとともに,特集として「少年非行と非行少年の処遇」を取り上げ,有効・適切な少年非行対策を確立するための資料を提供したいと考えた。そのために,非行少年の意識についての独自の調査を行ったほか,非行少年の特質・背景等を明らかにするよう試みた。
 これらの調査結果が,非行少年対策の進展のために,何程かの寄与をなし得るとすれば幸いである。
 また,本白書末尾に,事項索引と図表索引を掲載したので,読者の方が知りたい事項,興味を抱いている数値などを探す手掛かりとして活用していただきたい。
 終わりに,本書を作成するに当たっては,大韓民国法務研修院から貴重な資料の提供を受け,また,国内においても,法務省各部局はもとより,最高裁判所事務総局,警察庁,総務庁,外務省,厚生省,その他の関係機関及び多数の中学校・高等学校・大学から多大な協力と援助を受けた。ここに深く謝意を表し,あわせて,本書に関する責任は,専ら当研究所にあることを明らかにしておきたい。
平成2年10月
敷 田 稔 法務総合研究所長