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 平成 元年版 犯罪白書 第3編/第2章/第4節/1 

第4節 少年院における処遇

1 概  説

 少年院は,家庭裁判所が保護処分の一つとして行う少年院送致の決定を受けた者を収容し,これに矯正教育を授ける施設である。平成元年5月1日現在,全国で54庁が設置されている。
 少年院には,初等,中等,特別及び医療の4種類があり,かつ,男女別に分けられている。医療少年院以外は,いずれも心身に著しい故障のない少年を対象とし,初等少年院は14歳以上おおむね16歳未満,中等少年院はおおむね16歳以上20歳未満,特別少年院は犯罪傾向の進んだおおむね16歳以上23歳未満の者を,それぞれ収容している。
(1) 分類処遇制度
 少年院に収容される個々の少年の資質,環境等に関する問題点を科学的に調査し,共通した問題性をもつ少年をできるだけ同じ施設に収容し,共通する処遇内容等に応じた適切な集団編成を行った上,有効な処遇を行おうというのが分類処遇制度である。少年院に送致される少年は,家庭裁判所の審判の段階で,あらかじめ少年鑑別所における専門的知識に基づいた資質の鑑別を受けているが,家庭裁判所がこの鑑別結果や家庭裁判所調査官による調査結果等に基づき,送致すべき少年院の種別を指定して,少年院送致の決定を行うと,少年鑑別所長は,各少年院で実施されている基本的処遇計画を考慮し,当該少年を収容すべき少年院を指定する。その場合,家庭裁判所が当該少年に短期処遇を行うことが適当であるとしてその旨を勧告したときは,それに従うほか,当該少年を長期処遇を行う少年院に収容することとする場合であっても,家庭裁判所が処遇内容等について特別の勧告を付したときは,その勧告の趣旨を十分尊重している。なお,少年鑑別所では,少年院に送致される個々の少年について,少年院で行うべき処遇の指針を作成して少年の身柄と共に少年院に送付しており,少年院では,この処遇指針を参考にして,個々の少年について最も適当かつ有効と考えられる矯正教育を施すための具体的・実践的な教育計画(これを「個別的処遇計画」と呼んでいる。)を立てている。この計画の実行は固定化したものではなく,少年の教育を展開していく過程において必要に応じ修正を加えており,必要な場合には,少年鑑別所の再鑑別を行うなどトて,常に個々の少年の必要性や特性に応じた教育が行われるよう配慮がなされている。III-10図は,このような少年院の分類処遇制度に関し,少年院の種別ごとに設けられているそれぞれの処遇課程と少年院収容対象少年の分類区分(処遇課程の細分)との関係を示したものである。

III-10図 少年院分類処遇制度

 少年院における処遇は,短期処遇と長期処遇に分けられる。短期処遇は,非行傾向が単純又は比較的軽微で,早期改善の可能性が大きいため,短期間の継続的,集中的な指導と訓練により,矯正と社会復帰が期待できる者を対象とし,長期処遇は,短期処遇では矯正効果を十分挙げることが期待できない者を対象としている。なお,短期処遇は,収容期間を6か月以内とする一般短期処遇と,主な非行が交通事犯に係る者を対象とし,収容期間を4か月以内とする交通短期処遇の二つに区分される。長期処遇の対象者には,その者が最も必要とする処遇に着目して,生活指導,職業訓練,教科教育,特殊教育及び医療,措置の五つの処遇課程が設けられている。
(2) 在院期間
 少年院からの出院には,満齢又は満期による退院のほか,地方更生保護委員会の許可決定による退院及び仮退院がある。
 昭和63年中の少年院出院者は5,122人(男子4,543人,女子579人)で,うち,仮退院による者は4,753人(92.8%)である。短期処遇の各区分及び長期処遇別(以下「処遇区分別」という。)に退院,仮退院の人数と平均在院日数を見ると,交通短期処遇は197人(いずれも男子)全員が仮退院で93日,一般短期処遇は,退院である1人を除き1,500人が仮退院で151日(男子149日,女子163日)とな,っている。長期処遇では,退院者が368人で362日(男子361日,女子379日),仮退院者は3,056人で348日(男子348日,女子351日)となっており,平均在院日数は,退院者の女子を除きいずれも1年を下回っている。
(3) 医療と給養
 専門的又は長期の医療を必要とする者は医療少年院に収容されるが,その他の患者は,各少年院に配置されている医師の診療を受ける。しかし,少年院内で適当な医療を施すことができないときには,一般社会の病院に通院させたり,必要な期間入院させたり,あるいは,自宅その他の適当な場所で適切な医療を受けさせている。昭和63年中に全国の少年院から出院した5,122人のうち,在院中に医療を受けた者は,医療少年院での長期にわたる医療を受けた者も含めl,632人であり,その大半は短期間に治癒している。
 在院者の基本的な生活条件である衣食住については,衣類,寝具,その他日常生活に必要な物品等は少年院から貸与又は給与されているが,規律や衛生に害がないと認められる場合には,自己の物品の使用も許可されている。
 食糧の給与は,病気のための特別な食事をとらせる必要のある場合を除き,均等に給与されている。一般在院者に対しては,総給与熱量は1人1日3,100カロリーで,主食の米と麦の混合割合は,重量比でおおむね米8対麦2とされている。1日の副食費は,平成元会計年度で341円となっている。このほか,誕生日など特別の日の副食を彩るため,正月の三が日には1人1日当たり250円計750円が,祝祭日及び誕生日には1人1日当たり60円が,それぞれ加算される。