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 平成 元年版 犯罪白書 第2編/第4章/第2節/1 

第2節 保護観察

1 概  説

 保護観察は,犯罪者や非行少年に通常の社会生活を営ませながら,一定の遵守事項を守るように指導監督するとともに,必要な補導援護を行うことによって,その改善更生を図ろうとするもの(社会内処遇)である。保護観察の対象となる者には,[1]家庭裁判所の決定により保護観察に付された者(以下「保護観察処分少年」という。),[2]少年院を仮退院した者(以下「少年院仮退院者」という。),[3]仮出獄した者(以下「仮出獄者」という。),[4]刑の執行を猶予され保護観察に付された者(以下「保護観察付執行猶予者」という。),[5]婦人補導院を仮退院した者(以下「婦人補導院仮退院者」という。)の5種類がある。
 保護観察の期間は,[1]保護観察処分少年については,保護処分決定の日から20歳に達するまでで,20歳に達するまでの期間が2年に満たない場合は2年,[2]少年院仮退院者については,原則として出院の日から20歳に達するまで,[3]仮出獄者は,出所の日から残刑期間の満了の日まで(無期刑の仮出獄者は終身であるが,少年時に無期刑の言渡しを受けた者は,出所の日から10年),[4]保護観察付執行猶予者は,判決確定の日から執行猶予期間の満了の日まで,[5]婦人補導院仮退院者は,出院の日から補導処分の残期間の満了の日までである。なお,交通犯罪に係る保護観察処分少年のうち,後述(第3編第2章第6節)の交通短期保護観察に該当する少年(以下「交通短期保護観察少年」という。)については,実務上,原則として,3か月以上4か月以内の短期間で保護観察が解除される。
(1) 保護観察事件の受理状況
 最近5年間に保護観察所が新たに受理した保護観察対象者(以下「対象者」という。)の人員は,II-48表のとおりである。昭和63年の受理総数は,前年より4,404人(4.4%)減少して9万5,736人となり,58年以降続いた10万人台を割った。63年の受理人員を種類別に前年と比較すると,保護観察処分少年では2,380人,少年院仮退院者では560人,仮出獄者では1,063人,保護観察付執行猶予者では401人それぞれ減少している。

II-48表 保護観察新規受理人員(昭和59年〜63年)

 次に,昭和63年の新規受理人員(交通短期保護観察少年を除く。以乍の(2)も同じ。)を罪名・非行名別の構成比で見ると,II-49表のとおりである。保護観察のいずれの種類も窃盗の占める比率が最も高く,少年院仮退院者45.4%,仮出獄者31.6%,保護観察付執行猶予者31.1%,保護観察処分少年28.5%で,次いで仮出獄者と保護観察付執行猶予者では覚せい剤取締法違反のそれぞれ28.9%,20.3%,保護観察処分少年では道路交通法違反の26.9%,少年院仮退院者では傷害の8.6%と続いている。

II-49表 保護観察新規受理人員の罪名・非行名別構成比(昭和63年)

(2) 男女別,年齢層別及び保護観察期間別受理人員
 昭和63年の新規受理人員を男女別,年齢層別に見ると,II-50表のとおりである。男女別では,女子の占める比率は,総数において9.5%と低いが,保護観察処分少年及び少年院仮退院者では,それぞれ11.7%と他の種類に比べて高い。また,保護観察の種類別で見ると,女子の占める比率は,前年と比べて,保護観察処分少年は0.6ポイント,少年院仮退院者は0.3ポイント,保護観察付執行猶予者は0.1ポイントそれぞれ増加している。

II-50表 保護観察新規受理人員の男女・年齢層別構成比(昭和63年)

 次に,年齢層別に見ると,少年の対象者は,18・19歳の年長少年が保護観察処分少年では48.6%,少年院仮退院者で50.3%と,それぞれ最も多く,約半数を占めている。なお,昭和53年以降,17歳以下の低い年齢層の少年が占める割合がわずかずつながら上昇する傾向を示してきたところ,61年,62年と若干減少し,63年は,前年に比べて少年院仮退院者は3.3ポイント低下したが,保護観察処分少年は逆に1.1ポイント上昇している。他方,成人の対象者について見ると,仮出獄者については30歳代の者(29.8%)が,保護観察付執行猶予者については20歳代の者(49.0%)が,それぞれ最も多い。また,仮出獄者の43.5%,保護観察付執行猶予者の26.6%は,40歳以上の者によって占められており,これらの比率は,5年前の58年には,それぞれ38.1%,23.2%であったことにかんがみれば,対象者の中で中・高年齢層の者の占める割合が高くなっている。
 昭和63年の新規受理人員を保護観察期間別構成比で見ると,II-51表のとおりである。保護観察処分少年では,最も短い期間である2年以内の者が48.7%と約半数を占めており,これは,前年に比べて,1.2ポイント低下している。一方,少年院仮退院者では,2年以内の者の累積率はわずかながら上昇している。次に,仮出獄者では,仮出獄の適正かつ積極的な運用の推進に伴い,58年から保護観察の期間の伸長がみられ,1月以内の者は,57年には17.1%であったものが63年には2.6%に激減し,2月以内の者の累積率で見ると,57年が47.4%と約半数を占めていたものが,63年には25.8%とおおむね半減しており,仮出獄期間,すなわち保護観察期間の伸長がうかがえる。保護観察付執行猶予者では,期間の長い者が多く,2年を超え3年以内の者が52.0%,3年を超える者が45.2%となっている。

I-51表 保護観察新規受理人員の保護観察期間別構成比(昭和63年)