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 平成 元年版 犯罪白書 第1編/第4章/第4節 

第4節 外国人の日本における犯罪と被害

 I-67表は,昭和54年,62年及び63年における外国人登録法に基づく登録者及び外国人入国者を,国籍別に示したものである。登録者総数は,年々増加の一途をたどり,63年には94万1,005人(前年より5万6,980人・ 6.4%増)となっている。他方,入国者総数は,49年以来60年までは増加を続け,61年は科学万国博覧会開催年の翌年であったことと,急激に円高が進行したことなどが影響して前年より減少したが,62年からは再び増加に転じ,63年には241万4,447人(同25万3,172人・11.7%増)となった。
 I-68表は,昭和63年における外国人の交通関係業過及び道交違反を除く検察庁新規受理人員を罪名別及び国籍別に見たものである。新規受理人員総数は,前年に比べて1,412人(10.9%)減少し,1万1,503人となっており,罪名別に受理人員の多いものを見ると,窃盗3,077人,外国人登録法違反1,628人,傷害1,197人,覚せい剤取締法違反707人,出入国管理及び難民認定法違反604人などとなっている。なお,前年に比べて増加した罪名は,窃盗(134人・4.6%増),恐喝(35人・10.9%増),賭博・富くじ(31人・8.5%増)などである。国籍別では,韓国・朝鮮が8,676人(75.4%)で最も多く,以下,中国の913人(7.9%),フィリピンの434人(3.8%),アメリカ合衆国の397人(3.5%)などの順となっている。
 I-69表は,地方入国管理局において,出入国管理及び難民認定法に基づく退去強制手続がとられた事例について,最近5年間の退去強制事由別摘発人員を見たものである。退去強制手続をとられた者の数は,ここ数年急増し,昭和63年は,前年より3,725人(26.4%)増の1万7,854人に上っている。これを事由別に見ると,不法残留の1万5,970人(前年より3,178人・24.8%増)が最も多く,摘発者総数の89.4%を占めており,以下,資格外活動839人(同467人・125.5%増),不法入国616人(同74人・13.7%増),不法上陸149人(同15人・11.2%増)などの順となっているが,不法残留の84.4%に相当する1万3,475人は資格外活動をも伴っており,これと資格外活動だけで摘発された者を合わせると,その数は1万4,314人(同3,007人・26.6%増)となり,摘発者総数の80.2%を占めている。I-70表は,これら資格外活動者及び資格外活動がらみの不法残留者につき,当該活動の内容を男女別に見たものであり,63年は男子が前年より4,640人(108.2%)増の8,929人,女子が前年より1,633人(23.3%)減の5,385人となっており,前年までは総数の60%以上を女子が占めていたが,63年は総数の62.4%を男子が占め,男女の構成比が逆転している。なお,男子の83.6%は土木作業員,工員,給仕であり,女子の84.8%はホステス,ストリッパーによって占められており,このような活動内容から見ると,これら退去強制手続をとられた者の大半は,就労を目的に来日した者ともいえる。

I-67表 国籍別外国人登録者・入国者数(昭和54年,62年,63年)

I-68表 外国人の罪名・国籍別検察庁新規受理人員(昭和63年)

I-69表 退去強制事由別摘発人員(昭和59年〜63年)

I-70表 資格外活動者及び資格外活動がらみ不法残留者の活動内容(昭和63年)

I-71表 外国人新受刑者の国籍別人員(昭和62年,63年)

I-72表 外国人が被害者である刑法犯の認知件数(昭和59年〜63年)

 I-71表は,裁判が確定して新たに我が国の行刑施設に入所した外国人の数を見たものである。昭和63年における外国人新受刑者は855人(前年より50人・5.5%減)であり,新受刑者総数2万8,242人の3.0%に当たるが,この比率には近年特に大きな変化は見られない。国籍別では,韓国・朝鮮が677人で最も多く,外国人新受刑者の79.2%を占めており,次いで,中国の64人(7.5%),アメリカ合衆国の14人(1.6%)などとなっている。
 I-72表は,最近5年間に,日本国内において外国人が被害に遭った刑法犯の認知件数を見たものである。総数で見ると,昭和63年は9,530件で,前年より955件(11.1%)増加している。罪名別では,窃盗の被害が7,987件(83.8%)で最も多く,次いで,傷害の461件(4.8%),詐欺の258件(2.7%),暴行の164件(1.7%)などの順になっている。