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 昭和37年版 犯罪白書 第一編/第七章/四/1 

四 自由刑とその執行猶予

1 自由刑の種類と刑期

 懲役,禁錮および拘留を総称して自由刑とよんでいる。
 いま試みに,昭和三三-三五年における通常裁判手続きによって言い渡された第一審判決の種別をみると,I-148表のとおり,懲役刑が禁錮刑にくらべて圧倒的に多いこと,および拘留がきわめて少ないことがわかる。昭和三五年を昭和三四年と比較してみると,拘留は半減しているが,禁錮刑は逆に増加している。禁錮刑の増加は,前述のように,自動車による人身事故によるものの増加である。拘留が他の自由刑に比してきわめて少なく,かつ,その減少傾向にあるのは,軽犯罪法その他拘留を法定刑とする犯罪については,主として財産刑である科料が言い渡されていることと,この種の軽微な犯罪についても一般の刑事事件と同様な慎重な手続で処理されねばならないところから,あえて起訴しない場合が多いことによるものであろう。

I-148表 通常裁判手続による第一審判決別人員(昭和33〜35年)

 次に,懲役刑について通常第一審の有罪人員を刑期別にみると(I-149表),昭和三五年の刑法犯では,刑期が一年以上二年未満のものが最も多く,懲役総数の四五・八%を占め,これに次ぐものが六月以上一年未満の約三二・四%である。その他はこれらよりはるかに少なく,二年以上三年未満が九・〇%,六月未満が四・四%,三年が約四%となっている。そして以上を合計すると,総数の約九五・八%となるから,刑法犯では三年以下の範囲内でほとんどの事案が量刑されているといえる。しかも,その約四七%までが刑の執行が猶予されている。これらの刑期の比率の推移を昭和三三年以降についてみると,三年および二年以上三年未満がわずかながら増加を示している。

I-149表 懲役刑通常第一審有罪人員の刑期別人員と率(昭和33〜35年)

 特別法犯の懲役の刑期についてみると,昭和三五年では,六月未満が最も多く四〇・六%を占め,これに次ぐのが六月以上一年未満の三八・三%,一年以上二年未満の一八・四%であるから,二年未満のものの合計は,九七・三%に達する。したがって,特別法犯ではそのほとんどが二年未満の懲役で量刑されているといえる。しかも,総数の七四・四%まで刑の執行が猶予されている。
 禁錮の刑期別をみると,I-150表のとおり,昭和三五年では,六月未満が四一・四%,六月以上一年未満が四九・四%であるから,一年未満を合計すれば,総数の九〇・八%となり,大半の事件が短い刑期で処理されている。しかも,刑の執行猶予は,禁錮の総数の七二・一%に言い渡されている。

I-150表 禁錮刑通常第一審有罪人員の刑期別人員と率(昭和33〜35年)