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 昭和63年版 犯罪白書 第4編/第3章/第4節/5 

5 自由刑20犯以上の多数回前科者

 前科20犯以上の者は2,291人であるが,そのうち,自由刑前科を20犯以上有する者は203人で,その内訳は,自由刑20犯ないし24犯の者が160人,同25犯ないし29犯の者が36人,同30犯以上の者が7人で,この7人は,おおむね,詐欺,窃盗の前科を重ねている者である。なお,最多自由刑前科は35犯(1人)である。この203人は,いずれもその全前科の過半数が自由刑前科であり,全前科の7割以上が自由刑前科である者が188人(92.6%)となっている。調査時の年齢層を見ると,40歳未満の者はなく,40歳代が9人,50歳代が112人,60歳代が67人,70歳以上が15人となっており,最年少者は45歳,最年長者は74歳である。
 自由刑前科20犯以上の者の犯した犯罪の全罪名を累積して多い順に並べると,[1]詐欺,[2]窃盗(常習累犯窃盗を含む。),[3]傷害,[4]暴行,[5]住居侵入となっており,窃盗及び詐欺の2罪名で全罪名の67.9%を占めている。また,その犯した罪種な見ると,財産犯のみの者は23人であるが,自由刑前科の10犯までで見ると48人で,同11犯以降で見ると56人となっている。
 次に,上記の203人に科された自由刑の平均刑期は12.0月であるが,これを自由刑前科の段階別に見ると,初回から第5回では11.7月,第6回から第10回では11.3月,第11回から第15回では11.4月,第16回から第20回では12.9月となっており,自由刑前科の回数が多くなってもそれほど刑期は長くなっていない。また,その最終刑の刑期を見ると,6月以下の者が10人(4.9%),6月を超え1年以下の者が62人(30.5%),1年を超え2年以下の者が91人(44.8%),2年を超え3年以下の者が25人(12.3%),3年を超える者が10人(4.9%)であり,比較的短期の刑の者が多い。
 対象者203人のうち,調査時現在,刑務所入所中の者は111人(54.7%)にも上り,多くの者は最近に至るまで犯罪を犯しているものであり,社会生活を送っでいる92人について,最終刑時から調査時までの期間を見ると,1年以下の者が44人,1年を超え2年以下の者が12人,2年を超え3年以下の者が9人,3年以上の者が27人となっている。また,対象者各人が調査時までの間に,実際に刑務所に入所していた期間の合計を見ると,10年以下の者が4人,10年を超え15年以下の者が28人,15年を超え20年以下の者が62人,20年を超え25年以下の者が66人,25年を超え30年以下の者が33人,30年を超える者が10人であり,最高は35年7月の者(63歳)となっている。