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 昭和63年版 犯罪白書 第1編/第4章/第5節 

第5節 日本人の国外における犯罪と被害

 日本人の出国者数は,法務省入国管理局の資料によれば,昭和55年以来年々増加の一途をたどっており,62年には600万人を突破して一気に682万9,338人(前年より131万3,145人・23,8%増)となっている。これを,渡航先別に見ると,アメリカ合衆国が33.9%で最も多く,以下,台湾(11.8%),韓国(10.4%),香港(7.6%),中国(6.1%)などの順になっており,前年比の増加率で見ると,最も高いのは,オーストラリアの44.5%(4万9,209人増)で,以下,香港の44.3%(15万9,910人増),スペインの36.3%(9,116人増),シンガポールの28.8%(6万9,373人増),カナダの28.2%(1万8,744人増)などとなっている。
 最近5年間の日本人の国外における犯罪について,外務省及び国際刑事警察機構等を通じて警察庁が通報を受理した件数は,I-73表のとおりである。通報受理件数は,昭和62年には,前年より13件(13.0%)減少して87件となっており,その内訳を見ると,出入国管理関係が24件で前年より15件増加して最も多く,次いで,関税・為替管理関係法令違反の19件,麻薬・覚せい剤関係法令違反の17件などとなっている。これを日本人が犯罪を犯した国別に見ると,アメリカ合衆国が28件で最も多く,以下,韓国(16件),フィリピン,イギリス(それぞれ9件),タイ (6件),オーストラリア(3件),フランス(2件)などとなっている(警察庁刑事局の資料による。)。

Iー73表 日本人の国外における犯罪の態様別通報受理件数

 次に,昭和62年中に,日本人が国外で被った犯罪被害のうち,直接人身に攻撃を加えられたもので,在外公館から外務省領事移住部に報告のあったものを見ると,I-74表のとおりである。これを罪名別に見ると,最も多い被害は強盗の137人で,次いで,殺人の10人,傷害の8人などとなっており,地域別に見ると,スペインにおける被害が61人で最も多く,以下,アメリカ合衆国(14人),フィリピン(12人),ナイジェリア(11人),インドネシア(10人),フランス,ケニア(それぞれ5人)などとなっている。なお,被害を受けた者の総数167人のうち,死亡した者は9人であり,また,日本人の加害者により被害を受けた者は9人である。

I-74表 日本人の国外における犯罪(人身)被害人員