前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和62年版 犯罪白書 第3編/第2章/第2節/1 

第2節 少年事件の検察・裁判

1 少年検察

 III-16表は,昭和50年及び59年以降における交通関係業過及び道交違反を除く少年被疑事件の検察庁新規受理人員につき,刑法犯,特別法犯ごとに,少年による事犯が多い主要罪名別に,年齢層別構成比を示したものである。新規受理人員は,近年増加傾向をたどっていたが,59年から減少し,61年には前年より4,612人(2.1%)減少して21万262人となっている。その内訳を見ると,刑法犯では,2,984人(1.6%)減少して18万6,236人,特別法犯では,1,628人(6.3%)減少して2万4,026人となっている。また,総数に占める刑法犯の比率は,50年では95.6%であったものが,59年以降最近3年間は86%ないし88%台となっている。61年における主要罪名別内訳を見ると,窃盗が13万5,306人で総数の64.4%を占めており,次いで,傷害・暴行・暴力行為等処罰法違反が1万6,669人で7.9%となっている。61年の年齢層別構成比を見ると,総数では,年少少年が42.6%で最も高く,以下,中間少年の37.8%,年長少年の19.6%の順となっている。年少少年は,61年は前年より2,922人(3.2%)減少したが,総数中に占める比率は依然第1位である。年少少年が高い比率を示している主な罪名は,恐喝,傷害・暴行・暴力行為等処罰法違反及び窃盗である。なお,59年以降は,窃盗に占める年少少年の比率が下降し,中間少年の比率が上昇傾向にある。

III-16表 検察庁新規受理犯罪少年の主要罪名・年齢層別構成比(昭和50年,59年〜61年)

 成人を含めた検察庁の交通関係業過及び道交違反を除く新規受理人員中に占める少年被疑事件の比率を見ると,総数では,昭和52年の24.1%から逐年上昇を続け,61年には42.8%となっている。主要罪名別に見ると,窃盗では64.7%(前年は63.7%),傷害・暴行・暴力行為等処罰法違反では36.4%(同32.8%),恐喝では55.8%(同52.5%),強姦・強制猥褻では33.2%(同32.4%),強盗では31.4%(同26.6%),特別法犯では17.5%(同18.6%)となっている。
 検察官は,少年被疑事件を家庭裁判所へ送致するときは,少年の処遇に関して意見を付することかできるが,昭和61年における業過,過失致死傷及び道路交通法違反を除く家庭裁判所終局処理人員について,検察官の処遇意見と家庭裁判所の処理結果とを年齢層別に対比してみると,III-17表のとおりである。検察官が付した刑事処分相当,少年院送致相当,保護観察相当の各意見の比率と家庭裁判所の各終局処理結果の比率を比べると,刑法犯,特別法犯とも,各年齢層において,家庭裁判所の終局処理結果は検察官の付した意見の比率を下回っている。もっとも,殺人・強盗のいわゆる凶悪犯を取り上げて見ると,中間少年及び年長少年に対する検察官の意見は,少年院送致又は刑事処分相当の占める比率が高く,保護観察相当のそれが低いのに対し,家庭裁判所の終局処理結果は,保護観察の占める比率が検察官の付した意見の比率よりも高くなっている。
 III-18表は,家庭裁判所が検察官に送致したいわゆる逆送事件について,昭和61年における検察庁処理状況を罪名別に示したものである。起訴人員総数は,前年より4,297人減少して4万7,388人となっているが,そのうち,98.8%に当たる4万6,799人は交通関係業過又は道交違反である。起訴のうち,4万6,408人(97.9%)は略式手続によって処理されており,公判請求された少年は,980人(前年は1,013人)にとどまっている。公判請求率は2.1%で,前年の2.0%よりも若干上昇している。公判請求人員のうちでは,交通関係業過が50.7%(前年は50.8%)と最も多く,以下,窃盗の11.6%(同9.5%),道交違反の8.5%(同12.0%),覚せい剤取締法違反の6.9%(同7.3%)の順となっている。なお,覚せい剤取締法違反で公判請求された人員は,53年(33人)以降57年(148人)までは逐年増加していたが,58年(126人)から61年(68,人)までは連続して減少している。

III-17表 年齢層別検察官処遇意見及び家庭裁判所終局処理結果の構成比(昭和61年)

III-18表 逆送少年の罪名別検察庁処理人員(昭和61年)