前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和61年版 犯罪白書 第4編/第5章/第2節 

第2節 不起訴処分に対する救済制度

 公訴を提起するのは検察官であるが,検察官は犯罪の証明が十分であると認められる場合でも,必ず起訴しなければならないわけではない。検察官には,公訴の提起について広い裁量権があり,訴追を必要としないときは,公訴を提起しないことができる。また,犯罪の成立を認定すべき証拠がないなど公訴提起の条件が備わっていない場合には,検察官は事件を不起訴処分に付する。このように,刑事司法における検察官の役割は重要であり,その権限の行使は適正にされなければならないが,検察官が判断を誤り,起訴すべき事件を起訴しないという可能性もあることから,告訴人等に対する救済の制度が法律上整備されている。それが検察審査会に対する審査申立て及び管轄地方裁判所に対する付審判請求である。なお,法律上の救済制度ではないが,検察官が行った不起訴処分については,実務上,上級検察庁の長に対する不服申立てが認められており,上級検察庁がこれを受理した場合は,処分を再検討し,処理結果を不服申立人に通知している。