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 昭和60年版 犯罪白書 第3編/第2章/第1節 

第2章 非行少年の処遇

第1節 概  説

 本章では,警察等の捜査機関(以下「警察等」という。)や一般人によって検挙・発見された非行少年が,その後,検察,裁判,矯正及び更生保護の各段階で受ける処遇の実情を紹介するが,本節で,その処遇の流れをIII-7図によって概説しておく。
 警察等は,犯罪少年を検挙した場合,事件を検察官に送致しなければならないが,罰金以下の刑に当たる犯罪の場合には,直接家庭裁判所に送致する。
 犯罪少年の事件の送致を受けた検察官は,捜査を遂げた上,犯罪の嫌疑があると思料するとき又は嫌疑はなくても家庭裁判所の審判に付すべき事由があると思料するときは,処遇意見を付けて,事件を家庭裁判所に送致する。
 虞犯少年については,これを発見した者が家庭裁判所に通告若しくは送致しなければならないが,18歳未満の虞犯少年の場合には,警察官又は保護者が児童相談所に通告できる場合がある。なお,触法少年及び14歳未満の虞犯少年については,これを知った者が都道府県の福祉事務所又は児童相談所に通告しなければならないとされており,家庭裁判所は,都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り,これらの少年を審判に付することができる。
 家庭裁判所では,まず,少年に関する調査を実施するが,調査及び審判等に活用するため,少年を少年鑑別所に送致し,資質鑑別を求めることもある。調査若しくは審判の後,検察官送致,知事又は児童相談所長送致(18歳未満の少年に限る。),審判不開始,不処分,保護観,察,教護院・養護施設送致,少年院送致等の決定がなされる。
 検察官送致は,刑事処分を相当として事件を検察官に送致する処分で,逆送とも呼ばれているが,検察官は,逆送事件については,原則として起訴することとなっている。起訴された少年に対するその後の処遇の流れは,成人の場合と同様であるが,犯行時18歳未満の者に対する死刑及び無期刑の緩和,懲役及び禁錮に関する不定期刑(長期と短期を定める。)の採用,成人と区別された少年刑務所等での処遇等が定められている。

III-7図 非行少年処遇の流れ

 少年院送致となった少年は,初等,中等,特別及び医療の4種類のいずれかの少年院に収容されるが,仮退院を許可されると保護観察に付される。