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 昭和60年版 犯罪白書 第1編/第3章/第2節/1 

第2節 女子犯罪者の処遇

1 検察及び裁判

 昭和59年において全国の検察庁で処理された交通関係業過及び道交違反を除く女子被疑者は,7万4,104人であり,これを罪名・処理区分別に示すと,I-61表のとおりである。処理区分別に見ると,全体では,家庭裁判所送致が53.1%で最も多く,次いで,起訴猶予が22.4%となっているが,これを刑法犯及び特別法犯に分けて見てみると,刑法犯では,家庭裁判所送致が63.9%を占めるのに対し,特別法犯では,起訴が51.7%と最も高い比率となっている。また,処理総数を罪名別に見ると,窃盗が最も多く,総数の53.9%を占め,次いで,覚せい剤取締法違反(6.5%),毒物及び劇物取締法違反(6.3%)などとなっている。処分状況を見ると窃盗は,家庭裁判所送致が70.3%と最も高く,起訴されたものは,4.6%にすぎない。一方,覚せい剤取締法違反では,起訴されたものが69.0%,家庭裁判所送致が18.7%である。

I-61表 女子被疑者の罪名別検察庁終局処理人員(昭和59年)

 また,起訴猶予率を見ると,女子は男子に比べて起訴猶予になる比率が高く,女子刑法犯の起訴猶予率は70.2%で,男子刑法犯の29.4%の2倍以上となっている。女子刑法犯の起訴猶予率を男子のそれと対比しながら罪名別に見ると,女子はすべての罪名で男子の起訴猶予率を上回っているが,特に高い罪名は,窃盗(84.2%),横領・背任(80.9%),暴行(70.7%)などである。また,女子の特別法犯の起訴猶予率は27.2%で,男子のそれより高いが刑法犯に比べて全体的に低く,最も高い売春防止法違反でも29.2%である。
 次に,司法統計年報によれば,昭和58年の第一審公判における女子有罪人員を罪名別に見ると,有罪人員総数は4,797人で,そのうち,懲役が4,410人(91.9%),禁錮267人(5.6%),罰金113人(2.4%),科料7人(0.1%)となっている。罪名別構成比を見ると,覚せい剤取締法違反が42.1%で最も高く,窃盗の15.9%がこれに次ぎ,この二つの罪名で6割近くを占めている。
 一方,男子の覚せい剤取締法違反は18.0%にすぎず,女子における覚ぜい剤取締法違反の占める割合の大きいことが注目される。
 さらに,司法統計年報によると,昭和58年の一般女子保護少年の非行名別終局処理人員の総数は5万270人で,そのうち,最も多いものは窃盗(64.6%)であり,以下毒物及び劇物取締法違反(6.9%),傷害(2.8%),覚せい剤取締法違反(1.4%)となっている。終局処分の決定は,総数で審判不開始及び不処分の比率が90.7%となり,保護処分となる比率は7.9%である。なお,特別法犯は,刑法犯に比べ保護処分となる比率が高く,なかでも,覚せい剤取締法違反が69.0%と高くなっている。