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 昭和59年版 犯罪白書 第3編/第3章/第2節/10 

10 女子受刑者の処遇

 女子新受刑者の収容状況を見ると,昭和30年以降49年までは減少の傾向にあったが,50年からは増加に転じ,58年には1,157人で,前年に比べて36人(3.2%)の増加となっている。これを罪名別に見ると(III-25表参照),58年では覚せい剤取締法違反が52.1%で,56年以降3年連続して過半数を占めている。
 女子受刑者を収容する施設としては,栃木,和歌山,笠松,麓の各刑務所及び札幌刑務支所の5か所がある。女子受刑者は,その収容施設数が少ないこともあって,施設ごとの分類収容は行われていないが,施設内における工場,居室の指定等に当たっては,収容分類級が考慮されている。なお,女子外国人受刑者(WF級)は,すべて栃木刑務所に収容されている。
 女子施設における処遇は,情緒の安定性を養うこと,家庭生活に関する知識及び技術を習得させること,保護引受人との関係の維持に努めることなどが,重点事項として行われている。また,開放的な雰囲気で,収容に伴う心理的な圧迫感をできる限り少なくするよう,所内の調度品などについても家庭的なものを用意するなどの配慮がなされている。
 女子受刑者に対する職業訓練は,家事サービス,美容,洋裁,和裁等の多種目にわたって実施されている。さらに,覚せい剤事犯で入所する者の増加に対応して,薬害防止のための教育も活発に行われている。
 また,女子受刑者の医療及び母子衛生には特別の配慮が払われている。特に,受刑者が妊産婦である場合は,特別の保護的措置がとられていて,出産は外部の病院で行われている。さらに,受刑者が1歳未満の実子を伴う場合には,その乳児を刑務所内の保育室で1歳になるまで育てることも許されている。1歳を超えた乳児は,一般の乳児施設又は保護者のもとに預けられる。