前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和59年版 犯罪白書 第2編/第2章/第3節/2 

2 再犯率

 II-26表は,窃盗の有罪全確定者及びそのうちの初犯者について,3年内再犯率(以下「再犯率」という。)を見たものである。なお,本表では,実刑者については昭和53年まで,執行猶予者については55年までを見ている。実刑者の受刑期間(前述のとおり,平均刑期の最高が19.2か月であるところから2年間の幅をとることとした。)及び再犯調査期間(3年間)を考慮したためである。

II-26表 窃盗による有罪確定者の再犯率(昭和34年〜55年)

 まず,全確定者の再犯率について見ると,実刑者では,昭和37年の42.4%が最高で,46年の36.3%が最低であるが,年次推移の上でそれ程顕著な特徴は見受けられない。執行猶予者の再犯率は,34年の29.9%からその後若干の起伏を示しながらも低下傾向を示し,49年に24.1%と最低になっている。しかし,50年には前年より6.5ポイント上昇して30.6%と最高の値となり,その後はおおむね30%弱で推移し,34年から39年にかけての率に近似した値を示しているのが注目される。
 次に,全確定者中の初犯者だけを取り上げて見ると,実刑者の再犯率は,最も高いのが昭和39年の45.7%,最も低いのが40年の29.8%で,年次推移の上で際立った特徴はないが,34年から39年の間と44年,45年が他の時期に比べてやや高くなっている。執行猶予者の再犯率は,34年の28.0%から若干の起伏を示しつつも低下傾向を示し,49年には20.7%となったが,50年は前年に比べて7.0ポイント上昇して27.7%となり,その後,53年の20.4%を例外として,40年代よりもやや高い比率で推移している。
 さらに,上記の各再犯率を相互に比較すると,実刑者の再犯率は,全確定者とそのうちの初犯者の間で差異はなく,おおむね40%前後の数値となっており,実刑を科された者の再犯傾向は,初犯者でも前科者でも相違がないことを示している。これに対し,執行猶予者の再犯率を見ると,全確定者の方が初犯者よりも数ポイント高く,これは前科者の方が初犯者よりも再犯率が高いことを意味している。
 以上によると,再犯率の年次推移の点で,実刑者についてはほとんど変動がない。執行猶予者については,全確定者,初犯者のいずれも,昭和50年以降の再犯率が30年代とほぼ同じ水準まで上昇しており,初犯者も含めて犯罪傾向の進んだ者の比率が高くなってきていることが窺える。