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 昭和58年版 犯罪白書 第4編/第2章/第4節/1 

第4節 少年院における処遇

1 概  況

 少年院は,家庭裁判所が保護処分の一つとして行う少年院送致の決定を受けた少年を収容し,これに矯正教育を授ける施設である。昭和58年4月1日現在,全国で59庁が設置されている。
 (1)分類処遇制度
 家庭裁判所が少年院送致を決定するに当たっては,少年院の種別(初等,中等,特別及び医療)を指定しているが,少年院の種別は,医療を,除いては,少年を年齢層及び非行の進度によって区分するものである。しかし,少年院に収容される者の持つ問題性は,近年,ますます多様化,複雑化しており,これら在院者の個別的な教育上の必要性に応じた処遇を展開するためには,できるだけ共通した問題性を持つ少年を,同一施設に収容して処遇することが効果的である。そこで,各少年院ごとに基本的処遇計画を定め,これと少年の資質鑑別の結果を照らし合わせて収容する分類処遇制度がとられている。
 この制度においては,少年院における処遇は短期処遇と長期処遇に分けられる。
 短期処遇は,非行の傾向がある程度進んでいるが,少年の持つ問題性が単純若しくは比較的軽く,早期改善の可能性が大きいため,短期間の継続的・集中的な指導と訓練により,矯正と社会復帰を期待することができる少年を対象とし,長期処遇は,短期処遇をもってしては矯正効果を十分挙げることが期待できない少年を対象としている。短期処遇は,さらに,収容期間を6か月以内とする一般短期処遇と,主な非行が交通事犯に係る者を対象とし,収容期間を4か月以内とする交通短期処遇に区分される。長期処遇は,収容期間を2年以内とし,少年にとって最も必要とされる処遇に着目して,生活指導,職業訓練,教科教育,特殊教育及び医療措置の5課程が設けられている。IV-8図は,この分類処遇制度の骨子を示したものである。

IV-8図 少年院分類処遇制度(昭和58年4月1日現在)

 (2)在院期間
 昭和57年中に少年院から出院した人員は5,059人(男子4,483人,女子576人)で,退院による者420人,仮退院による者4,639人となっている。短期処遇の区分及び長期処遇別に見ると,一般短期及び交通短期は仮退院者のみで,その平均在院日数は,前者では149日(男子1478,女子163日),後者では84日となっている。長期処遇では,退院者の平均在院日数は357日(男子359日,女子336日),仮退院者のそれは354日(男子3508,女子379日)で,女子の仮退院者を除き,いずれも1年を若干下回っている。
 (3)医療と給養
 専門的又は長期の医療を必要とする少年は医療少年院に収容されるが,その他の患者は各少年院に配置されている医師の診察を受ける。しかし,少年院内で適当な医療を施すことができないときには,一般社会の病院に通院させたり,必要な期間入院させたり,あるいは,自宅その他適当な場所で適切な医療を受けさせている。昭和57年中に全国の少年院から出院した5,059人のうち,在院中に疾病によって医療を受けた者は1,635人である。その大半は短期間に治癒しているが,医療少年院での長期にわたる医療を受けた者も含まれている。
 在院者の衣,食,住という基本的な生活条件については,衣類,寝具,その他日常生活に必要な物品等は少年院から貸与又は給与されているが,規律や衛生に害がないと認められる場合には,自己の物品の使用も許可されている。
 食糧の給与は,病気のため特別な食事をとらせる必要のある場合を除き,均等に給与されている。一般の在院者に対しては,総給与熱量は1人1日3,100カロリーで,主食の米と麦の混合割合は,重量比で米75対麦25とされている。1日の副食費は,昭和58年度で268.25円となっている。このほか誕生日など特別の日の副食を彩るため,正月三か日には各1人1日当たり200円(3日間計600円)が,祝祭日及び誕生日には各1人1日当たり50円が,それぞれ加算される。