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 昭和58年版 犯罪白書 第2編/第4章/第3節/2 

2 検挙状況等

 (1)検挙人員及び検挙率
 II-75表は,最近5年間における暴力犯罪の検挙人員及び検挙率の推移を見たものである。検挙人員は,暴力犯罪全体で一貫した増加傾向を示し,1981年には1977年の1.35倍の21万7,785人を数えている。
 また,暴力犯罪全体の検挙率は,この5年間大きな変動は見られず,83%台という,全犯罪のそれ(44%ないし45%台)より高い率で推移している。罪名別の検挙率もこの5年間大きな変動は見られず,殺人が95%を超えて最も高く,以下,傷害(88%台),強姦(71%ないし72%台),強盗(52%ないし54%台)の順になっている。
 (2)犯人象
 1981年において,暴力犯罪により検挙された21万7,785人の特性を見ると,II-76表のとおりである。
 性別では,9割強が男子であるのに対し,女子は,その比率の最も高い殺人でも11.0%である。男女の割合は,近年,おおむね同傾向にある。

II-75表 暴力犯罪の検挙人員及び検挙率ドイツ連邦共和国(1977年〜81年)

II-76表 暴力犯罪による検挙人員の特性別構成比ドイツ連邦共和国(1981年)

 年齢層別では,21歳未満の青少年の占める比率が殺人で19.7%,強姦で23.7%,傷害で25.8%であるのに対して,強盗では52.3%と極めて高いことが注目される。21歳未満の青少年の占める比率を長期的な推移で見ると,強姦では減少しているが,殺人,強盗及び傷害において増加傾向にある。
 次に,検挙人員に占める外国人の比率を見ると,暴力犯罪全体で17.9%と,全犯罪でのそれ(16.0%)よりも高い。1981年1月1日現在のドイツ連邦共和国における外国人(非合法入国者を含む。)の全人口に占める比率が7.4%であることにかんがみると,犯罪者,とりわけ暴力犯罪者に占める外国人の比率の高さが分かる。罪名別では,強姦(30.6%)及び殺人(27.2%)で際立って高い。また,傷害のうち,より罪質の重い危険・重傷害に限れば,その20.9%を外国人が占めている。しかも,これらの暴力犯罪に占める外国人の比率は,1970年代以降いずれの罪名においても上昇しており,暴力犯罪に占める外国人の比重は,近年ますます大きなものとなっている。
 次に,本件以前に警察による検挙歴を有する再犯者の比率は,いずれの罪名においても,近年,上昇傾向にある。1981年で見ると,暴力犯罪全体では,49.4%の者が再犯者であり,全犯罪での比率(45.1%)より高い。なかでも,強盗(72.0%),強姦(62.1%)及び殺人(56.8%)における再犯者の比率の高さは注目に値する。
 (3)被害者像
 1975年に連邦刑事警察局が実施した,殺人で有罪判決を受けた者と被害者との関係についての調査によると,犯人と面識のある者は69.2%を占め,その内訳は,知人が45.0%と最も多く,次いで,配偶者の14.0%,他の親族の10.2%となっている。他方,面識がないと見られる未知の人又は1週間に満たない知人が30.8%を占めている。また,被害者のうちの40.3%が女子であり,国籍別ではその10.7%が外国人である。