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 昭和58年版 犯罪白書 第2編/第4章/第2節/3 

3 科刑状況等

 II-72表は,1981年におけるクラウン・コート(Crown Court,ほぼ我が国の地方裁判所に当たる。)の裁判終局人員を罪名別に示したものである。無罪率を罪名別に見ると,傷害が最も高く27.9%,次いで,強姦の21.4%,殺人の12.0%,強盗の11.6%となっている。次に,有罪人員について見ると,殺人では476人のうち,327人(68.7%)が拘禁刑の実刑に処せられており,さらに,そのうちの132人の者が無期拘禁刑になっており,その拘禁刑合計に占める割合は40.4%となっている。殺人で執行猶予付拘禁刑に処せられた者は25人(5.3%)である。なお,イギリスでは,殺人の法定刑に死刑はない。殺人で保護観察(プロベーション)に処せられた者を見ると,嬰児殺が11人中,7人とその比率が高い。また罰金刑の者6人は,すべて謀殺脅迫若しくは謀議(threat or conspiracy to murder)の罪名の者である。強盗について見ると,有罪人員3,347人のうち,59.0%の者が拘禁刑の実刑に処せられて最も多く,次いで,ボースタル(成人であれば拘禁刑に相当する犯罪を犯した,15歳以上21歳未満の犯人が送致される矯正施設)送致が20.2%となっている。強盗において,ボースタル送致や短期収容所送致(Deten-tion Center Order,3か月ないし6か月程度の収容が,矯正の見地から相当とみなされる14歳以上21歳未満の犯人に科される処分)という処分が,他に比べて多いのは,有罪人員の年齢層が比較的若いためである。強姦では,有罪人員481人のうち,67.2%の者が拘禁刑の実刑となっている。傷害では,有罪人員7,940人のうち,35.8%が拘禁刑の実刑,23.0%が執行猶予付拘禁刑,14.6%が罰金となっており,他の暴力犯罪に比べると,実刑率が低く,執行猶予付拘禁刑及び罰金の占める割合が高くなっている。

II-72表 罪名別裁判終局人員イギリス(1981年)