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 昭和57年版 犯罪白書 第4編/第5章 

第5章 薬物犯罪の現状と展望

 薬物濫用の風潮は,今や,世界的傾向であり,各国ともその防圧に苦慮している。
 昭和20年代の覚せい剤流行期及び30年代のヘロイン濫用禍を経験し,その制圧に成功した我が国においても例外ではなく,現在,我が国は,覚せい剤を中心とする戦後第3の薬物濫用期を迎え,大きな社会問題となっている。
 覚せい剤等薬物の濫用は,濫用者自身の健康を害し,その人格を崩壊させるばかりでなく,家庭を破壊する契機となり,しかも,その薬理作用のもたらす幻覚・妄想に起因する凶悪犯罪の多発により地域社会を不安に陥れ,多くの人達を悲惨な状態に追い込んでいるが,これはまことに憂慮すべき事態であると言わなければならない。
 このように,薬物の濫用は,個人,家庭,社会に計り知れないほど大きな害悪を及ぼし,ひいては,民族の興亡にも影響を及ぼしかねない重大問題と考えられ,薬物濫用の速やかな絶滅は,重要かつ緊急な国民的課題となっている。
 そこで,本章では,今まで述べてきたことを総括しつつ,我が国における薬物犯罪の現状と激増の要因及び将来の展望等について概説する。