前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和57年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/3 

3 処遇の概要

 少年院における処遇は,在院者の心身の発達程度を考慮して,明るい環境の下に,規律ある生活に親しませ,勤勉の精神を養わせるなど,正常な経験を豊富に体得させ,その社会不適応の原因を除去するとともに,長所を伸長し,心身共に健全な少年の育成を期して行われる。また,在院者の処遇に当たっては,慈愛を旨とし,併せて,医学,心理学,教育学等に基づく知識の活用に努め,施設内処遇から施設外処遇への円滑な移行を図り,早期に社会復帰を可能にすることが期待されている。特に,近年では,分類処遇制度が整備された結果,各少年院が分担する対象者の特質が類型化され,資質面の特性や教育処遇上の必要性に応じた処遇類型を設定することが可能となり,それにふさわしい教育内容や指導方法で構成された教育課程(在院者の特性及び教育上の必要性に応じた教育内容を総合的に組織化した標準的な教育計画)を編成するとともに,個々の少年について,個別的処遇計画が作成され,効果的な矯正教育を行う努力が続けられている。その概要は次のとおりである。

III-9図 短期処遇の区分及び長期処遇別新収容者の不良集団加入歴(昭和56年)

(1) 教育課程を構成する指導領域等及び個人別教育目標の背景となった問題点
 少年院の教育課程は,生活指導,職業補導,教科教育,保健・体育及び特別活動の各指導領域で構成されている。教育課程は,課業として指導するものとされており,1週の標準課業時間は,昼間をおおむね33単位時間(1単位時間は50分),夜間をおおむね11単位時間,週当たり44単位時間を下回らない範囲で,施設や地域の実態に応じて,少年院の長が定めることとされている。
 個人別教育目標は,個別的処遇計画の骨子となるもので,個々の在院者について,非行と密接に関連している問題性,教育可能性,保護環境上の問題性等を総合的に検討して,在院者に出院までに達成させるべき重点事項を,おおむね3項目程度設定するものとされている。III-10図は,処遇課程等別に,昭和56年8月1日現在全国少年院在院者の個人別教育目標を設定する上で,最も問題とされた,非行に直接かかわる態度・行動上の問題点を,7類型に整理して構成比によって見たものである。窃盗癖を最も問題とされた少年の構成比が50%を超えているのは,職業訓練課程及び特殊教育課程で,交通短期処遇には窃盗癖を最も重要な問題とされた者はいない。以下,問題類型別に最も高い比率を示している処遇課程等を見ると,道路交通法違反の反覆常習では交通短期処遇の74.0%,薬物濫用では医療措置課程の45.3%,不良集団(不良生徒・学生集団,地域不良集団,暴走族)との交友では教科教育課程の35.7%,反社会的集団(テキヤ,博徒等の暴力組織)への帰属では生活指導課程(Gl)の20.5%,性・異性問題では特殊教育課程の16.8%となっている。

III-10図 個人別教育目標の背景となった問題点の処遇課程等別構成比

(2) 生活指導
 生活指導は,在院者の心身の発達程度・資質等の特性を踏まえ,非行に直接関係のある生活態度や反社会的・非社会的なものの考え方を是正し,社会生活への適応を図ろうとするものであって,矯正教育の根幹をなすものである。その方法や内容は画一的なものでなく,教育実践を通じて多様に展開されている。また,在院者の社会復帰の時期は,この指導領域における改善の程度及び努力の度合いに左右されるところが大きく,指導と評価に当たっては,科学的な妥当性が必要とされ,更に,指導する職員の人格とかかわる側面が多く,在院者の自主的な改善向上の意欲を喚起することも要求されている。III-53表は,生活指導の教育内容とされている非行にかかわる態度及び行動面の問題性等に対応する特別講座の実施状況を見たものである。昭和56年には,少年院在院者中,薬物(有機溶剤及び覚ぜい剤)濫用者の全体に占める比率が8割を超えている実情を反映して,薬物濫用防止教育の特別講座を設けている施設が最も多く (45庁),次いで交通・暴走族問題(33庁)となっている。なお,これらに関する特別講座は,一般短期処遇及び交通短期処遇を実施する全施設に設けられており,女子施設には性・異性問題,生活指導課程を有する施設には不良交友・暴力団問題の特別講座を設けている施設が多い。また,情緒未成熟,職場不適応,体力増強,勤労意欲欠如など資質上の問題性に対する指導,親子・家族問題など保護環境上の問題性に対する指導,生活マナーなど基本的生活態度に関する指導及び情操面の指導なども実施されており,これらは,集団活動,面接,相談助言,講話,心理療法等の方法によって行われている。このように,最近の運用の実際は,生活指導を一つの指導領域として構築し,そのあり方に治療的指導を加え,個々の在院者の持つ非行に直接かかわる問題の改善を目指して行われている。

III-53表 非行にかかわる態度及び行動面の問題性等に対応する特別講座の実施状況           (昭和54年〜56年)

(3) 教科教育
 在院者のほぼ1割は,中学校課程を履修すべき学齢生徒である。これらの者に対しては,中学校の課程を履修させるため,中学校学習指導要領に準拠した教育課程を編成している教科教育課程に編入し,学校教育法に基づく中等普通教育を施している。また,仮退院時に学齢生徒である者には円滑な復学を,在院中に中学校の全課程を修了した者には,中学校卒業証書を取得させるよう配慮している。高等学校教育を必要とする者には,通信制の課程を置く高等学校に編入学させて高校教育を履修させるほか,高校教育に準じた指導を通信教育などを活用して実施している。更に,大学等への進学を希望し,その必要がある者に対しては,それに応じた教育内容を中心に指導するほか,文部省の行う大学入学資格検定試験を受験する機会を与えている。III-54表は,昭和56年度における在院者の教科関係資格取得状況及び出院時の進学状況を見たものである。56年度の新収容者中,入院時に中学在学中の者は570人であったが,このうち,171人は学齢中に仮退院して中学校に復学し,399人は,在院中に中学校の全課程を修了して出身中学校長名の中学卒業証書を取得している。また,56年度中に出院した者のうち,48人は高等学校,2人は大学,20人は専修学校に進学している。なお,学校教育以外の教育を必要とする者に対しては,社会通信教育を受講させており,56年度における受講者数は,前年度からの継続者を含めて,公費生550人,私費生301人である。

III-54表 在院者の教科関係資格取得状況(昭和56年度)

(4) 職業補導
 少年院に収容された者の多くは,出院後の職業生活に関する必要な知識や勤労意欲に欠け,かつ,出院後直ちに職業生活に入る必要のある者が多いことから,これらの者に対しては,勤労意欲の向上を図り,職業の選択及び職業生活への適応を容易にさせるために行う職業情報の提供,生産実習,技能実習等在院者の特性に応じた職業実習(作業療法を含む。)並びに職業生活に関する相談助言その他の指導を内容とする職業指導,職業訓練法等関係法令に基づいて行う職業に必要な知識及び技能,技術を習得させる指導を内容とする職業訓練を実施している。そのほか,職業指導若しくは職業訓練の応用実習として又は社会生活への円滑な移行を図る手段として,院外の事業所や学識経験者等に委嘱して,一般社会の職場で実習を受けさせる院外委嘱職業補導の制度もあり,昭和56年中に504人(住込み27人,通勤477人)がこの院外委嘱職業補導を受けている。なお,56年度中に,職業補導関係の資格・免許を取得した人員は,III-55表のとおりである。

III-55表 資格・免許取得人員(昭和56年度)

(5) 保健・体育及び特別活動
 保健・体育の内容は,保健衛生及び体育とされている。特別活動は,在院者に共通する一般的な教育上の必要性により行われるもので,主として集団的に行われる教育活動とされており,その内容は,自主的活動,院外教育活動,クラブ活動,レクリエーション,行事等である。ちなみに,昭和56年において,院外教育活動に参加するために外出した人員は,延べ2万5,325人,外泊した人員は,延べ1,947人である。