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 昭和57年版 犯罪白書 第3編/第1章/第1節/1 

第3編 少年非行

第1章 少年非行の動向と特質

第1節 少年非行の動向

1 概  説

 少年非行とは,14歳(刑事責任年齢)以上20歳未満の少年による犯罪行為,14歳未満の少年による触法行為(刑罰法令に触れる行為をしたが,刑事責任年齢に達しないため責任を問われない行為)及び虞犯(保護者の正当な監督に服しない性癖,不良交際など,それ自体としては犯罪ではないが,犯罪を犯すおそれがあると認められる行状)という3種類の行為又は行状を総称する概念である(少年法第3条第1項)。この非行概念は,成人への人格形成期にあって可塑性に富む少年に対しては,犯罪行為だけでなく,虞犯(及び放任された少年)についても,少年の健全な育成と矯正・保護のために国家(少年裁判所)が司法的に介入する必要があるとするアメリカ少年司法の「国親思想」に基づく概念と言われている。犯罪現象として少年非行の動向を見る場合には,それ自体としては犯罪ではない虞犯については,犯罪行為及び触法行為とは区別する必要があると同時に,犯罪行為と触法行為については,これを統一的に見る必要がある。犯罪行為と触法行為は,刑事責任年齢に関する法制に基づく区別であり,犯罪構成要件に該当する違法行為という点で共通するだけでなく,犯罪の認知件数と検挙件数及び検挙人員の関係を見る場合などにも,同じ視野で見る必要があるからである。特に,少年非行の動向において,低年齢化傾向や中学生の非行化を見る場合にそうである。したがって,本編では,「非行」は,刑罰法令に触れる違法行為という意味で,犯罪行為と触法行為を包括する用語として使用する。

III-1表 少年・成人別刑法犯検挙・補導人員及び人口比(昭和21年〜56年)