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 昭和57年版 犯罪白書 第1編/第2章/第2節/1 

1 公務員犯罪の受理・処理

 I-29表は,最近3年間において検察庁が受理した公務員(公社・公団の職員のようないわゆる「みなす公務員」を除く。)による通交違反を除く犯罪を罪名別に示したものである。昭和56年の受理人員総数は,前年より54人減少して2万1,138人となっている。罪名別の受理人員を見ると,業過が1万5,989人(刑法犯の77.8%,全体の75.6%)と圧倒的に多い。刑法犯では,業過と偽造は前年より増加しているが,他はいずれも減少している。55年に倍増した詐欺は,56年には半減し,54年に近い数値となっている。56年における特別法犯の受理人員は577人で,前年の1,086人から509人(46.9%)減少している。従来,大規模な選挙が行われた年は,公職選挙法違反による受理人員が相当数に上っていたことから見て,56年における特別法犯の大幅な減少は,同年に大規模な選挙が行われなかったことが一因と考えられる。

I-29表 公務員犯罪罪名別検察庁新規受理人員(昭和54年〜56年)

 昭和56年における特異な事件としては,県職員による身代金目的主婦誘拐殺人事件,国家公務員による金融機関強盗事件などがある。
 I-30表は,最近3年間における道交違反を除く公務員犯罪の処理状況を示したものである。昭和56年における起訴人員総数は,前年より104人増の1万1,588人で,その88.0%は業過によって占められている。起訴率について見ると全体では56.1%であるが,罪名別に見ると,刑法犯では収賄が76.5%と最も高く,業過(66.0%)がこれに続いている。職権濫用に対する起訴は例年極めてまれで,56年においてもすべて不起訴とされているが,これは,この種事件の大部分が,警察,検察庁,裁判所,矯正施設等の職員に対する告訴・告発事件であって,事実自体が犯罪とならないもの,あるいは,犯罪の嫌疑がないものなどが多いためである。この種事件については,不起訴処分に不服がある者は,裁判所に対して付審判の請求をすることができる。I-31表は,51年以降の5年間における付審判請求事件の決定状況を示したものであるが,この5年間で付審判の決定がなされたのは,52年と55年に各1件あるだけである。

I-30表 公務員犯罪罪名別検察庁処理人員(昭和54年〜56年)

I-31表 付審判請求事件決定状況(昭和51年〜55年)