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 昭和57年版 犯罪白書  

はしがき

 この白書は,昭和56年を中心とした最近の犯罪動向と犯罪者処遇の実情を概説したものである。
 我が国の犯罪情勢は,欧米諸国と対比してみても,犯罪発生率及び犯罪増加率の双方とも著しく低く,おおむね良好な状態にあるように見受けられる。しかし,覚せい剤事犯は,昭和40年代後半から急激な上昇を続け,現在,同事犯による検挙人員は10年前の約5倍となっているが,特に,少年の検挙人員は,約34倍に激増している。しかも,現在,覚せい剤の大部分は,国外で密造されたものが密輸入された上,暴力団の支配する密売組織によって全国に拡散されていて,この覚せい剤密売が,暴力団の有力な資金源になっている。また,覚せい剤の薬理作用の影響による重大犯罪も多発し,一般の市民に大きな不安を与えている。
 このような犯罪情勢にかんがみ,本白書は,今や大きな社会問題となっている覚せい剤を中心とした薬物犯罪に焦点を当て,当研究所が検察庁,矯正施設及び保護観察所の協力を得て実施した総合的な実態調査の結果得られた資料等を中心として,我が国の薬物犯罪の動向,薬物犯罪者の特質,その処遇の実態の分析及びそれによって示唆される対策を明らかにするように努め,併せて,入手できた公的統計資料に基づき,欧米3箇国及びアジア諸国における薬物犯罪の現状及び取締り状況などを紹介した。
 終わりに,この白書を作成するに当たり,法務省各部局はもとより,最高裁判所事務総局,警察庁,欧米諸国政府等から協力と援助を受けたことに改めて謝意を表するとともに,この白書に関する責任は,専ら当研究所にあることを明らかにしておきたい。
昭和57年10月
早 川 晴 雄 法務総合研究所長