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 昭和56年版 犯罪白書 第4編/第3章/第2節/1 

第2節 アメリカ合衆国

1 少年非行の動向

 アメリカの刑法犯(ただし,指標犯罪のみ)検挙人員,うち,18歳未満の少年検挙人員及び21歳未満の青・少年検挙人員の最近10年間(1970年から1979年)の推移を図示すると,IV-21図のとおりである。(なお,アメリカの刑法犯認知件数の最近10年間の推移は,第1編第1章のI-7図のとおり。)また,IV-71表及びIV-72表は,刑法犯総数並びに殺人,強盗,傷害,窃盗,強姦及び放火の主要6罪種について,1970年及び最近3年間(1977年から1979年)における少年検挙人員,青年検挙人員,少年比,青年比,及び少年,青年,成人の各人口比を示したものである。
 少年の検挙人員は,刑法犯総数において,1970年から1979年の10年間に約59万人から約84万人へ約1.4倍に増加し,青年を含めると,約80万人から約124万人へ約1.5倍に増加している。少年比は46.1から38.8に低下しているが,青年比は17.0から18.4に上昇し,両者を併せると青・少年層が検挙人員に占める比率は,1979年において57.1%に達している。人口比を見ると,1970年から1978年の9年間に,少年は18.0から28.2へ,青年は19.5から29.9へ著しく上昇している。

IV-21図 刑法犯検挙人員の推移アメリカ(1970年〜79年)

IV-71表 刑法犯検挙人員の少年比・青年比及び人口比アメリカ(1970年,77年〜79年)

IV-72表 主要罪種別刑法犯検挙人員の少年比・青年比及び人口比アメリカ(1970年,77年〜79年)

 主要6罪種について,1978年の数値を見ると,殺人は少年比9.3,青年比14.8,併せて青・少年比24.1であり,人口比は少年が5.6,青年が21.6である。殺人は,犯罪学では青・少年の関与する割合が低い犯罪類型と言われているが,アメリカでは,殺人の検挙人員の約4分の1が青・少年によって占められているのである。
 強盗は,少年比34.0,青年比22.5,併せて56.5であり,人口比は少年が154.5,青年が247.6である。つまり,強盗検挙人員の約6割が青・少年であり,人口比から見ると少年は成人(43.2)の約4倍,青年は約6倍も検挙されていることを意味する。
 傷害(指標犯罪としての傷害は「加重暴行傷害」(aggravated assault)という身体に対する重い態様の加害行為をいう。)は,少年比16.0,青年比14.8,併せて青・少年比30.8である。人口比から見ると,少年は成人並み,青年は成人の2倍以上である。
 窃盗は,少年比45.5,青年比17.8,併せて青・少年比63.2である。人口比から見ると,少年,青年とも成人の約6倍も検挙されている。窃盗は青・少年の関与する割合が高い犯罪と言われているが,この数値はそれを実証している。
 強姦は,少年比16.0,青年比16.8,併せて青・少年比32.8である。人口比から見ると,少年は成人並み,青年は成人の約3倍である。
 放火は,少年比48.4,青年比12.4,併せて青・少年比60.8である。人口比では,少年は成人の約6倍,青年は約4倍である。放火は青・少年の関与する割合が高い犯罪とされており,これを裏付ける数値と言えよう。