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 昭和56年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/9 

9 女子受刑者の処遇

 女子受刑者を収容する施設としては,栃木・和歌山・笠松・麓の四つの刑務所があり,そのほかに札幌刑務所に独立した女区がある。女子受刑者は,その数が少ないこともあって,原則として,受刑者の居住地に近い施設に収容されており,施設ごとの分類収容は行われていないが,施設内における工場,居室の指定等に当たっては,収容分類級が考慮されている。なお,女子外国人受刑者(WF級)は,すべて栃木刑務所に収容されている。
 女子施設における処遇は,その特性を考慮して,情緒の安定性を養うこと,家庭生活に関する知識及び技術を習得させること,保護引受人との関係の維持に努めることなどを,重点事項として行われている。また,開放的なふんい気で,収容に伴う心理的な圧迫感をできる限り少なくするよう,施設の調度品などについても,家庭的なものが用意されるなどの配慮がされている。
 女子受刑者に対する職業訓練も美容,洋裁,和裁等の多種目にわたって実施されている(III-51表参照)。更に,近年,女子受刑者については,特に,覚せい剤事犯で入所する者が急激に増加しており(III-32表参照),生活指導の一環として,薬害防止のための教育も活発に行われている。
 これらの生活指導,職業訓練とともに,女子受刑者の医療及び母子衛生に特別の配慮が払われている。特に,受刑者が妊産婦である場合には,特別の保護的措置がとられていて,出産は外部の病院で行われている。更に,受刑者が1歳未満の実子を伴う場合には,その乳児を刑務所内の保育室で1歳になるまで育てることも許されている。1歳を超えた乳児は,一般の乳児施設又は保護者のもとに預けられる。